キャリア・パスをイメージしてスキル・アップを図ろう ――楽しくしごとをして人生を有意義に過ごす
ここでは,メカトロニクス応用製品に組み込むソフトウェアの開発に携わる新人技術者や若手技術者を対象に,今から何をどうやって学び,技術者としての道を踏み出すとよいのかについて解説します.メカトロニクス・ソフトウェアを設計・作成できるようになると,しごとにはまったく不自由しません.そして,意識して自分のスキル・アップを図っていくと,10年目以降の技術者ライフが楽しいものになります. (筆者)
『あゝ野麦峠』(1)という本があります.最近,テレビやマンガで人気の新選組より少し後の時代,富国強兵のための輸出産業を支えた製糸工場で働く女工たちの悲劇を描いたものです.朝の5時から夜の10時まで,黙々と働き詰めで病気になったり自殺したりと,悲惨な環境で生きた若き女工たちのノンフィクションです.
これと比べればまだましかもしれませんが,日本のソフトウェア技術者の生活にも,どこか似たものがあります.睡眠時間を5時間も取れれば幸せなほう,インスタント・ラーメンをすすりながらコードを書き,テストとデバッグに明け暮れて最後には体を壊す.みなさんの先輩で力ずくの開発競争に疲弊し,退いた人はおおぜいいます(図1).
もし,みなさんが「学校は卒業したのだから,もう勉強はいらない」と思っているのならば,これは野麦峠を目指していることと同じです.体力と運のある人は生き延びるでしょうが,楽しい人生とは無縁な生活を送ることになります.これが望みと言う人はいないでしょう.
本稿は,自分の好きな技術や論理,科学を職業基盤としながら一人前になるための指南書です.それは,楽な道ではありません.むしろ,厳しいけれども充実したものになるはずです.今から何をどうやって学び,技術者としての道を踏み出すとよいのかをお話ししたいと思います.
図1 あゝソフトウェア開発現場...