キャリア・パスをイメージしてスキル・アップを図ろう ――楽しくしごとをして人生を有意義に過ごす
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◆製品開発の過程◆
ある装置を開発し,製品化しようと考えたとき,全体の業務は次のような手順で進行します.
- 基本的な要件の規定(精度,時間,コスト,操作性,危険性などの検討)
- 市場性や競合製品の分析(購入者の数,増加予想,類似品の価格などの検討)
- 実証実験(ハードウェア,ソフトウェアの実験)
- 製品化に向けての問題検討(エレキ,メカ,ソフトの切り分け,購入部品や再利用部品の検討)
- 試作開発
- 少量試作
- 量産
- 販売,保守,導入サービス
開発規模や市場規模が大きくなるにつれて,個々の作業量や技能要求は分化します.当然,企業の中でも分業化が進みます.メカトロニクス・ソフトウェア技術者がかかわるのは,実証実験や製品化に向けての問題検討,試作開発が主体です.将来的には,いく種類もの開発をこなした技術者は,市場性などの分析をソフトウェアの観点から行えるようになります.
問題は,どのようなスタンスで実証実験の枠組みを作っていくかにあります.実証実験で考察した結果は,製品化に際して特定のアルゴリズムや制御シーケンスになります.つまり,実験のコンセプトがその後,ソフトウェアに展開されるわけです.この意味で,実証実験とはシステムの方式を決定する作業であるとも言えます.これができるようになれば,プログラマの次の段階であるドメイン専門家となり,仕様を策定して開発を行う力があることになります.読者のみなさんには,他人に仕様を決めてもらうだけでなく,自分が仕様を決める立場になれる技術力を身につけていただきたいと思うのです.そうすれば,開発のおもしろみが倍増するはずです.さらに,でき上がったシステムの信頼性が高くなることもまちがいありません.
筆者の聞き及んでいるところでは,自動車の製品設計のチーフ(チーフの定義は各社いろいろのようだが...)はそれまでエンジンやシャーシを設計してきた人ばかりとは限りません.むしろコンセプトを大きく変えるときは,車をシステムとして見渡せる立場にある品質・性能テスト・チームや電子設計チームの人がチーフになる場合があるようです.もちろん,チーフに抜てきされる人はどのような分野でも「知らない」では済まされないので,相当な勉強が必要です.