キャリア・パスをイメージしてスキル・アップを図ろう ――楽しくしごとをして人生を有意義に過ごす
●○● Column ●○●
◆勉強だけで十分か?◆
どのような工学分野でも,優れた技術者になるためには継続的な努力と失敗の積み重ねが必要です.特にメカトロニクスの分野では,原子力から医学,ネットワークまで,広い分野の数理モデルや論理をソフトウェアで実現するわけですから,過去の経験を生かせる人材がいるといないとでは大違いです.言いかたを変えると,「結果として適切な判断を下したうえで,チームを判断した方向へガイドできる熟練した技術者」が必要なのです.こうした役目を果たすためには,自分の得意な領域だけを知っていても普通はだめで,かなりの学習努力が求められます.そして,それができるようになった人間にはより高いレベルの要求が来ますから,学習努力に終わりはありません.
筆者の見るところ,メカトロニクス・システムに関連する組み込みソフトウェアやシステム技術者の需要は右肩上がりで増え続けています.ということは,みなさんはやがてこうした経験を積んだ人材として次の世代を引っ張る役割を担うことが今から期待されているのです.場合によっては,海外のプログラマをリードすることが求められるかもしれません.
ここで注意しなければならないのは,勉強熱心な技術者はつい勉強だけに熱中してしまうという点です.これは問題です.「勉強だけしていれば世の中が認めてくれる」という考えかたが通じる機会は,いまや激減しています.むしろ,「勉強した結果をつねに外に示す」という考えかたを持たないと,作れるものも作れなくなってしまうでしょう.特にソフトウェアは知識の記述であり,単体で利用するよりも多くの人の知識を組み合わせることで威力を発揮するときがあります.そうなると,分析技術について,アルゴリズムについて,エラー訂正の方法について,お互いに相手が何を持っているかわからないと,いつまでたっても効果を発揮できないというわけです.
というわけで,まとめると「1に勉強,2におしゃべり,3,4がなくて,5にコーディング」ですね.