キャリア・パスをイメージしてスキル・アップを図ろう　――楽しくしごとをして人生を有意義に過ごす

　そのメカトロニクスの世界がここ20数年で，コンピュータを応用することにより多彩な展開を遂げました．ロボットやディジタル・カメラなど，電子工学や機械工学だけでは作ることのできないさまざまなシステムが，現在も生まれています．このような，メカ（メカニクス）とエレキ（エレクトロニクス）の上に搭載されるソフトウェアを，ここでは「メカトロニクス・ソフトウェア」と呼ぶことにします．

　メカトロニクス・ソフトウェアは，昔からメカやエレキなどのハードウェア部品（コラム「ハードウェアということばが指す範囲」を参照）をソフトウェアで置き換えて，製品コストを下げる目的で使われてきました．ところが最近は，ハードウェアでは実現できない機能を搭載するためにソフトウェアが使われています．予測制御などは，この典型です．こうしたシステムでは，メカトロニクス，エレクトロニクス，ソフトウェアの連携が必要です（全体を「メカトロウェア」とでも呼んだほうがよいわけだ）．

　例えば，筆者は，最近になって自宅の風呂給湯器を入れ替えました．たかだか15年前の同系の風呂給湯器は，マイコンが入っていても制御の対象は狭いものでした．追い炊き中に自分が熱いと思ったら，ゼンマイじかけのタイマを逆に回して，沸かし時間をゼロにしたものです．ところが今は，その制御作業を給湯器が人間の代わりに行ってくれます．湯温を指定しておくと，その温度に達するまで沸かして自動停止してくれるのです．また，少し湯量が足りないときなどは，ご親切にもシステムが湯を追加してくれるのだから驚きです．これで小市民でも殿様気分で風呂に入れるわけです（図3）．こうして，世の中は便利になる一方と言えましょう．

図3　気分はお殿様