キャリア・パスをイメージしてスキル・アップを図ろう ――楽しくしごとをして人生を有意義に過ごす
● 第3段階:方式を作れる,人をリードできる
次の段階は,方式を考えて人をリードできることです.これは,少し大きくて複雑なプログラムを作るプロジェクトのチーム・リーダになった後の段階ともいえます.いくつかのアプリケーション分野,好奇心,危険の要素などを学んだ結果,技術と知識が統合体となって組み込みソフトウェア技術者であるみなさんの頭脳に形成されます.この統合された頭脳を使う人のことをここでは「技能者」と呼ぶことにしましょう.技術とは,方程式とか産業標準,作業手順書などで明示し,文書化できる対象です.一方,明文化できない部分を技能と呼びます.技能者は,次の製品開発の課題に対して新しいしくみや方式を考えて,その実現をリードできる人間です.経験を積んだ技術者のことを専門家と呼びます.技能者は,これに近いともいえますが,専門家は方式や技術を生み出すまでの能力は要求されないのが普通です.
ソフトウェアの領域だけで考えると,同じCPUとメモリを使いながら複数のソフトウェア技術を組み合わせて,従来製品より応答速度を40%向上できるアルゴリズムを生みだせる人が技能者です.また,新機種開発において,従来のやりかたなら4人で6ヵ月かかるところを,6人で2ヵ月でできてしまうようなプログラム構造を作り出せたら,これはほんとうの技能者です.
技能者になる方法を示すのは,本稿の範囲を超えています.ただ,メカトロニクス・システムの分野において技能者になるには,システム・レベルの試行や思考の訓練が欠かせないと思います.