キャリア・パスをイメージしてスキル・アップを図ろう ――楽しくしごとをして人生を有意義に過ごす

二上貴夫

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技術解説 2004年6月14日

●○● Column ●○●
◆30歳定年説――それでもシーラカンスは生き残った◆

 20年以上も前に「プログラマ30歳定年説」というものがありました.プログラムを書く能力や体力は30歳が年齢の上限だ,というものです.この仮説を検証した人がいるのかどうかは知りませんが,かなり同意できる仮説だと筆者は思っています.ここでプログラマとは,今で言うIT系のプログラマのことを指していたわけですが,現代のメカトロニクス・ソフトウェア技術者にも当てはまります.プログラミング言語を習得して,設計書に記されている内容をコードとして記述する作業だけで考えると,30歳はよい引けどきです.なぜなら,コードを朝から晩まで書くしごとは,論理的な能力に加えて,記憶力,注意力,体力など,「若さ」ということばでくくられる能力が必要だからです.

 筆者自身の経験でも,朝から晩(翌朝?)までコーディングに没頭できたのは29~30歳くらいまででした.品質度外視ではありますが,1ヵ月に1万行のコードを書くなど,もう2度とできないと思っています.毎日,朝の8時から夜の11時までコーディングと実験,週に一度は朝までデバッグというサイクルを回しながらの開発は,たとえ若くても,だれにでもできるというものではありません.このような開発を,ここでは「力ずく開発」と呼びましょう.

 こうした開発方法が,いまだに多くの現場で実施されていることは残念です.しかし,以前と違って,このような現場だけがすべてではなくなってきています.その理由はいくつかありますが,力ずく開発では,

  • かならず犠牲者が出る(本文の冒頭で述べた『あゝ野麦峠』と同じ)
  • でき上がったシステムのノウハウを再利用できない
  • 保守がきわめて難しくなる

といった問題が多発するからです.

 こうした問題を根絶するのは無理としても,軽減する方法として,「知恵尽くし開発」とでも呼ぶしごとの進めかたがあります.これは,力ずくの経験や反省から生まれた多くの改善努力の結晶です.その具体的な方法は会社によってさまざまですが,共通している点があります.それは,長年にわたってソフトウェア開発の技術や方法を改善しようと地道な努力を続けた人材が組織の中核にいる点,そして比較的少人数(10~30人程度)の組織であるという点です.プログラミングの能力,生産性については,チーフはかならずしも若手にかなうものではありません.しかし,ソフトウェア開発に関する分析力や判断力,統率力などに優れています.そのような何名かのベテランと多くの若手の混成チームでしごとをしています.

 どのような産業でもよく言われることですが,良いものを確実に作れる組織は,それなりの評価が社会の中で与えられるようになります.これが「知恵尽くし開発」のチームです.最近,雑誌などで話題になっている「XP(eXtreme Programming)」や「Scrum(スクラム)」と呼ばれる開発方法によって改善報告を出す組織は,みなこのタイプの組織です.

 さて,知恵尽くし開発を行うとなると,20代の若者だけでできるのか? というおもしろい問題が出てきます.たぶん,ある特殊な条件が満たされれば可能だろうと思いますが,普通は無理でしょう.やはり,勉強と経験を積み重ねた人材が必要です.つまり,いろいろな力ずくも含めて経験を積んだ人間がいて,チームとして動けるような組織だけが,知恵尽くしの道に進めるのです.

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