モータ動作の原理が見える「ブラシレス・モータ&インバータ」教材を機能強化 ―― 回生機能と3相PWM制御モニタ用LED 9個を新たに搭載
CQ出版社が販売している教材キット「CQブラシレス・モータ&インバータ・キット」のインバータ基板の仕様がバージョンアップしました(写真1).ここではその仕様変更個所について説明します.なお,ドライバ基板のMOSFET周辺部/V850搭載制御基板部の仕様は変更していません.
写真1 完成した「CQブラシレス・モータ&インバータ・キット」
●インバータが生成する3相PWMのモニタLED搭載
本キットでは,3相フルブリッジ回路を用いたPWM方式のインバータ制御を行っています.ドライバ・デバイスとしてU相/V相/W相のそれぞれにハイ・サイドとロー・サイド用のMOSFETを計6個搭載しています.バージョンアップ後のインバータ基板には,各MOSFETがON状態のときに点灯するモニタ用LEDを6個搭載しました.これによりPWM動作原理を理解しやすくなりました(図1). また,ステータとロータの永久磁石の位置と同期させるために,ステータのU相/V相/W相の各コイルの上にホール・センサが付いていていますが,このホール・センサの磁石検出用のモニタLEDを3個搭載しました.
図1 3相120°通電パターンによるモータ回転の仕組み
これらのモニタLEDにより,現在,回転のどのステージにいるかをひと目で確認できるようになりました(写真2).もちろん,高速回転時は人間の目では点滅が分からなくなりますが,本キットには,ボリュームにより回転数を変えられるソフトウェアが標準で付いてるので,低速回転にして確認することができます.オシロスコープがある場合は,信号線を観測することで理解がいっそう深まります(写真3).
写真2 3個×3列に並んだ黄色のモニタLED
上段はホールセンサ・モニタ(左からU/V/W相),中段はハイ・サイドMOSFETモニタ(左からU/V/W相),下段はロー・サイドMOSFETモニタ(左からU/V/W相),さらに最下段には電源スイッチとそのモニタLED(この写真は図1のステージ1に相当).
写真3 オシロスコープにつなげてPWM波形を観測
本キットを使用したCQエレクトロニクス・セミナの実習の様子.
●昇圧回生機能を搭載
回生機能の実現にはいろいろな手法があります.本キットでは鉛蓄電池への昇圧回生を実行する回路とボタン・スイッチが新たに組み込まれており(写真4),それを実験する回生ソフトウェアが搭載されています.これにより基本的な回生機能の動作を確認できます.回生が実行されているかどうかは,ロー・サイドMOSFETがONになっていること(U/V/W相ロー・サイド用LED3個が点灯)で確認できます.
注: 旧キットでも,回生用回路/スイッチを配線すれば同様の実験は可能だった.
写真4 標準で用意された回生用スイッチ(中央部の押しボタン)
本キットは,CQ出版WebShopで販売しています.標準セット版(ソフトウェア開発環境minicube2付き)の価格は84,000円(税込),簡易セット版(ソフトウェア開発環境なし)の価格は75,000円(税込)です.
●参考文献
(1) Tech Village編集部;「はんだ付けとコイル巻きでモータ技術の神髄を体感 ―― CQエレクトロニクス・セミナ「実習・モータ&インバータの原理と組み立て」,Tech Village,2012年8月14日.
(2) CQ出版社;CQエレクトロニクス・セミナ つくるEV技術シリーズのWebページ (本キットを使用した実習セミナを随時開催).
(3) Tech Village編集部;「手巻きモータ・キットを使った『EVミニカート・レース』の開催を計画 ―― コイルの巻き方と制御プログラムが勝負を左右」,Tech Village,2012年11月26日.