DRAMをどう使うか? ――性能の改善技術とその性能を生かす選択方法

池田博明

tag: 組み込み

技術解説 2003年3月17日

●リーク電流を削減する

 DRAMを低電圧で高速動作させるためには,トランジスタのスレッショルド電圧を電源電圧に比例して低下させる必要があります.ところが,スレッショルド電圧をある値以下に低下させると,トランジスタのリーク電流が顕在化します.低電圧化によってリーク電流が増大するため,モバイル機器用DRAMを中心に電流削減に新たな手法が用いられ始めています.その1例が,データ保護のためのリフレッシュ動作すら行わず,メモリ・アレイ全体の電源供給を切ってしまう特別な動作モードでリーク電流を削減するという手法です(図15(c))

●DRAMのtREF特性を利用して電流を削減する

 セルのデータ保持特性は温度によって大きく変わります.おおむね10℃の温度上昇で保持時間は60%に減少します.したがってtREFの値は,DRAMがもっとも高温となった状態が最悪であり,逆に温度が低ければtREFは最悪値より延長できます.例えば,周囲温度(Ambient
Temperature;Taと略記)が70℃でtREF=64msの場合,Ta=40℃ならばtREFは約300msでもよいことになります.この特性を利用すれば,リフレッシュ動作の頻度を下げて消費電力を削減できることになります.モバイル機器用DRAMにはこうした電流削減策が用いられます(図16表2)

f16_01.gif
〔図16〕温度依存性を利用した電流削減
周囲温度が低い場合,レジスタ値を変更してリフレッシュ動作の頻度を下げ,リフレッシュ動作電流を削減する(TCSR:temperature compensated self refresh)

〔表2〕PASRおよびTCSRによる自己リフレッシュ電流の変化
動作領域限定(行アドレス側;PASR)と温度依存性を利用した電流削減策(TCSR)を併用することで,リフレッシュ電流の値を最悪値の半分から1割近い値にまで低減することが可能となる.通常動作ではTa=70℃(最大値),温度拡張動作ではTa=85℃(最大値).

  Ta=85℃ Ta=70℃ Ta=45℃
128Mビット(全ビット・リフレッシュ時)
600μA
350μA
200μA
  部分リフレッシュ(2バンク)
500μA
250μA
150μA
部分リフレッシュ(1バンク)
430μA
180μA
100μA
部分リフレッシュ(1/2バンク)
370μA
120μA
80μA
部分リフレッシュ(1/4バンク)
340μA
90μA
70μA
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