DRAMをどう使うか? ――性能の改善技術とその性能を生かす選択方法

池田博明

tag: 組み込み

技術解説 2003年3月17日

3.モバイル用DRAMの消費電力を削減する方法

 ディジタル・コンシューマ市場用のDRAMの代表は,モバイル機器に搭載されるDRAMでしょう.その名称は各社各様ですが,ここではモバイル機器用DRAMとして総称することにします(コラム「紛らわしい製品名一覧」を参照).モバイル機器はバッテリ駆動が中心となります.そのため,消費電力の削減が重要なテーマとなっており,さまざまな手法が採られています.以下にそれらを紹介します.

●コアを細分化することで消費電流を削減する

 DRAMの消費電流は,メモリ・アレイの動作電流(コア電流)と入出力電流に大別されます.コア電流の大部分は,セルのリフレッシュ動作に伴うビット線の充放電電流です.一般的な値を想定した際のコア電流は,次のように計算できます.メモリ・コア用の内部電源電圧をVint(=1.8V;安定化電源回路を介するため,外部電圧よりも低くなる),ビット線の初期電圧をVbl(=Vint/2)とします.1回のアクセス動作で対象ビット線群の半数がVintまで充電され,残りの半数が0Vまで放電されます.プリチャージ時には両者をショートさせて初期電圧を得るので,その際の電流発生はありません.

  コア電流=充放電電荷量÷アクセス時間
      =ビット線容量(Cb)×充電ビット線数(N)×充電振幅(Vint-Vbl)÷アクセス時間(tRC)
      =(100fF)×(16k)×(1.8V/2)÷50ns
      ≒30mA.

 この電流を削減するための低電圧化はモバイル機器用DRAMの仕様として取り込まれています.さらに,機能の対策として,ビット線容量や活性化ビット線数を削減するといった方法があります.以下,これらについて述べます.

 ビット線容量を小さくするためには,1本のビット線に接続するメモリ・セル数を半減させるなどして,ビット線の長さを短くする手法が用いられます.つまり,ビット線を細分化します.この手法の利点は,ビット線の容量(浮遊容量)が小さくなることで信号レベルが改善され低電圧化に寄与できることです(図13).副作用としては,ビット線の細分化に伴って必要な周辺回路の数が増え,チップ・サイズが増大する点です.

f13_01.gif
〔図13〕ビット線細分化によって低電圧動作を可能に
信号量は,セル容量に蓄積された電荷をビット線容量に再配分することによって決まる.その値はビット線容量と電源電圧の関数となる.ビット線を細分化し,その容量を半分程度にすれば,信号量を確保しつつ電源電圧を下げることができる(ただし,センス・アンプの数と関連する周辺回路が増大する).

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