統合型プリント基板CADツールの運用方法 ――回路設計者とプリント基板設計者の共同作業を成功させよう!
ここでは,プリント基板設計に利用される支援ツールの概要と,回路設計者がプリント基板を設計会社や基板メーカなどへ発注する際の注意点について説明する.最近では,回路図エディタやレイアウト・ツール,伝送線路シミュレータ,共通データベースなどを統合した設計環境が比較的容易に入手できるようになっている.ここではオーストラリアAltium社の「Protel DXP」を例に,その機能と適用例を紹介する. (編集部)
プリント基板設計に対する要求の多様化に伴って,CAD(computer aided design)ツールはプリント基板設計を自分自身で行う場合だけでなく,外部に委託する場合にも必要なツールになりつつあります.そこで本稿では,プリント基板設計を外部に委託する際の注意点と,回路設計者にも役立つ統合型CADツールの運用方法について紹介します.
まず,プリント基板設計を外部に委託する場合のしごとの進めかたについて,筆者の考えを示します.
●リーダシップを発揮し,トップダウンでしごとを進める
筆者は,どのようなプロジェクトでもトップダウンに作業を進めることが,なによりも重要だと考えています.例えば,プロジェクトが完了するまでの工程について,1)ゴールを設定する,2)ゴールまでのコースを決める,3)ゴールまで線路を引く,4)ゴールまで列車を走らせる,といったことを考えてみます.この上流から下流までの工程を後戻りすることなくストレートに,そして勢いよく進めることにより,早期にゴールへたどり着くことができます.
これは一見あたりまえのことですが,これを実現するためには,リーダがプロジェクト全体を的確に把握し,正しい決断を行い,そして正確に意思を伝えながらプロジェクトを強力に押し進めなくてはなりません.この重要性はどのようなしごとの場合にも当てはまりますが,とかく,「ああでもない,こうでもない」といったやり取りが多くなりがちなプリント基板設計では,特に重要なことなのではないかと思います.そこで求められるのは設計工程の起点にいる回路設計者のリーダシップです.
例えば,回路の設計が終わり,プリント基板設計を外部に委託する場合を考えてみます.このとき,少なくとも回路図,設計仕様書,使用部品のリスト,部品の図面を用意しますが,相手にこれらだけを渡して,「後はお任せします」というだけでは,期待どおりの基板はでき上がってきません.