統合型プリント基板CADツールの運用方法 ――回路設計者とプリント基板設計者の共同作業を成功させよう!

城野幸男

tag: 実装

技術解説 2003年5月29日

●自動配線ツールの癖を読む

 最後に,自動配線による配線例を紹介します.筆者の経験では,自動配線を使わない場合,プリント基板の設計に要する全時間の60%以上を配線作業に費やしています.このため自動配線を利用して省力化することは,たいへん重要なことです.

 自動配線では,少なくとも人手の100倍以上のスピードで配線を行えます.しかし,自動配線ツールが適切な配線を行えるかどうかというと,その能力は平均的なプリント基板設計者よりもはるかに低いのが実情です.いくら高級な自動配線ツールを使っても,人手によって配線する場合のように適切な経路に配線を通すことはできません.また,配線密度を上げることもできません.

 自動配線の場合,部品の配置の良し悪しが結果に大きく影響します.例えば,手作業は配線中スペースが足らなくなった場合,部品を移動してスペースを確保することができます.しかし自動配線ツールは配線中に部品位置の調整を行いませんので配置が不適切であればすぐに配線不能になってしまいます.このように,自動配線にはいくつかの弱点があります.自動配線を有効に働かせるためには,以下のような方法で補うことが必要です.

  1. スペースに余裕を持たせる.
  2. クリティカルな(制約が厳しくて配線しにくい)箇所は人手で配線し,残りを自動で配線する.
  3. 適用を4層以上の基板に限る.両面基板を自動配線する場合は,電源パターンを先に人手で配線する.
  4. 配線の進みぐあいを逐次確認しながら自動配線を行い,問題があればそのつど停止して,人手で配線を修正する.
  5. 本番前に,何種類かの異なる部品配置に対して自動配線を試し,適正な部品配置を見つけておく.

 では,先ほど伝送線路シミュレーションを適用したCPUボードを使って,実際に自動配線を行ってみます.配線ルールはピン間3本とし,グリッドを12.5mil(約0.32mm)に,線幅を6mil(約0.15mm)に,線間隔を6mil(約0.15mm)に設定してあります.ビア・サイズは39mil(約1.0mm)です.

 この自動配線ツールは,最初はグリッド上に配線を行います.スペースが足りなくなると,障害になっている配線をオフグリッドの領域に押しのけてスペースを作ります.また,45度の方向にも配線(斜め配線)を行います(コラム「マンハッタン・レシオと斜め(45°)配線」を参照).こうすると,90度の配線(直角配線)よりも距離が短くなります.図16に,両面基板で人手による配線,両面基板で自動配線(電源のみ人手配線),4層基板で自動配線のそれぞれの結果を示します.自動配線の結果と人手による配線の結果がどのように違うか,比較してみます.

 今回の例では,両面基板でも4層基板でもなんなく100%配線を行えました.

 両面基板で自動配線を行った結果には,人手による配線と比べて約2倍の数のビアが使われています.つまり,人手による配線よりもむだな層間の行き来が多いと推定できます.

 自動配線ではグリッドに乗っていないQFPのピンからの配線がすべて中央から引き出されており,オフグリッドの配線能力は高そうです.全般的には遠回りしている配線は少なく,斜め配線を利用して距離を縮めていることがわかります.バス以外はおおよそ人手による配線と同じルートで配線されています.適切な配線パスを探す能力も高そうです.

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〔図16〕配線結果を比較
両面基板と4層基板,人手による配線と自動配線について,配線結果を比較した.

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