統合型プリント基板CADツールの運用方法 ――回路設計者とプリント基板設計者の共同作業を成功させよう!
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マンハッタン・レシオと斜め(45°)配線
ラッツ・ネスト注(ラッツ・ネットとも呼ぶ)の長さをX軸とY軸に分解し,これを加算したものをマンハッタン長と呼び,これと実際の配線パターンとの長さの比率をマンハッタン・レシオといいます(図A-1).
通常,プリント基板の自動配線では,層ごとに縦または横に配線方向が決められ,縦と横の直角方向のみに配線が行われます.このため障害物が存在せず,配線が冗長なく行われた場合には,実際の配線長はマンハッタン長と同じになり,マンハッタン・レシオは1になります.
しかし,実際には基板上のあちこちに存在する障害物を避けなければならないので,配線長はマンハッタン長よりも長くなります.また最適な配線が行われず,遠回りした配線が多い場合には,マンハッタン長はさらに長くなり,マンハッタン・レシオは1を大きく超えます.この,理想配線時に1を示すマンハッタン・レシオは,配線結果のよしあしを評価するうえでわかりやすい指標の一つとして使用されています.
ところが,最近の高性能な自動配線ツールの中には,信号の劣化を防ぐため,斜めに対角線を引くようにパッド間を直線の配線で結ぶものもあります.この場合,最適配線時の配線パターンの長さは,マンハッタン長よりも短くなる場合があり,マンハッタン・レシオは1よりも小さくなります(図A-2).
余談になりますが,このような自動配線時の斜め配線はLSIの分野でも利用され始めているようです.自動配線の結果を人手による配線結果に近づけるためには,まだまだ多くの課題を解決しなくてはなりませんが,斜め配線によってマンハッタン・レシオを下げる方法は,その課題の解決の一つであるといえます.
注;結線すべき端子と端子の間を直線で結んだネットのこと.結線が完了すれば消える.ねずみの巣のように多数の線がからまって見えることから,このように呼ばれるようになった.
〔図A-1〕マンハッタン長とマンハッタン・レシオ
〔図A-2〕斜め配線によってマンハッタン・レシオが最小化された例(6層基板の内層,Protel DXPを使用)