無線ネットワーク設計の考え方 ―― アクティブRFIDタグを用いて無線システムを構築するには
● 部品の種類や価格は今後の市場の広がりで決まる
アクティブRFIDタグに使用されるRFチップは,今のところ,種類が非常に少ない状況です.また,価格もパッシブRFIDタグと比べて高価格です.これまでは,製品の市場もそれほど大きくなかったため,各チップ・メーカともそれほど積極的に製品を投入してこなかったためと思われます.
アクティブRFIDタグの普及はこれから1~2年で大きな転換点にさしかかるといわれています.アクティブRFIDタグが大量に流通し,市場が膨らめば,チップの種類も増え,機能・性能の選択肢が増えることが予想されます.チップだけでなく,アンテナや小型のRF部品なども同じ状況で,今後の市場の広がりを期待できます.
● 情報と現実をつなぐアクティブRFIDタグ
現在のところ,RFIDタグというと,パッシブRFIDタグを思い浮かべる方がほとんどでしょう.しかし,アクティブRFIDタグでなければ要求を満たせない用途が存在します.これまで,その機能を果たす製品がなかったため,市場開拓が遅れ気味ですが,アクティブRFIDタグがポピュラになってくれば,おのずと市場も広がるものと筆者は考えています.
特に,人に付けるタイプのタグは,現在はかばんに提げたりポケットにしまったりという携帯方法にとどまっています.しかし今後は,ペンダント型や腕時計型,イヤホン型など,「タグらしくない」形状も実現可能になると考えます.さらに小型化が進めば,すでに現代人の必需品となっている携帯電話への組み込みも可能となり,利用シーンもどんどん増えると思います.
情報と現実のインターフェースという,重要な役割を果たしつつ,アクティブRFIDタグは,より使いやすい形に進化していくことでしょう.
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アクティブRFIDタグを中心に説明してきました.組み込みシステム技術者の方がシステムを構築するという立場に立って説明したので,ハードウェア技術者やシステム・インテグレータの方にとっては物足りない内容だったかもしれません.
今後,さまざまな技術が開発され,アクティブRFIDタグもさらなる進歩を遂げることでしょう.しかし,これまで説明してきたとおり,アクティブRFIDタグは情報と現実をつなぐインターフェース機器であることが一番の役割なのは変わらないでしょう.その役割を的確に理解した上で,ツールとして利用していただける一助になれば幸いです.
まつい・ゆきお セイコープレシジョン(株)