次世代の携帯電話システムを支えるGaNデバイスなどに注目 ―― マイクロウェーブ展2009 レポート
マイクロ波・ミリ波に関連する技術と製品の専門展示会「マイクロウェーブ展2009」が2009年11月25~27日にパシフィコ横浜で開催された(写真1).材料として窒化ガリウム(GaN)を用いた高移動度トランジスタ(HEMT)とパワー・アンプ・モジュール,および広帯域周波数シンセサイザ・モジュールなどに注目が集まっていた.
●GaNデバイスの出展が相次ぐ
高周波電子デバイスの商社であるエム・アールエフは,米国Cree社とRFデバイスに関する総代理店契約を結んだと2009年7月に発表した.マイクロウェーブ展2009ではそのお披露目となるRFデバイスとして,GaNの高移動度トランジスタ(HEMT)を展示した(写真2).第3世代(3G)携帯電話システムの無線基地局(BTS:Base Transceiver Station)用である.
Cree社は炭化ケイ素(SiC)基板や発光ダイオード(LED)などの大手ベンダとして知られている.GaN HEMTは,同社のSiC基板を利用して作製した.ガリウム・ヒ素(GaAs) HEMTに比べると効率が高いことが特徴だという.3G携帯電話システムのBTSでも特に,高速データ通信仕様のLTE(Long Term Evolution)向けに適しているとする.
GaN HEMTの性能は例えば4GHzにおける利得が16dB,ドレイン効率が65%,ドレイン耐圧が最小84V,チャネル温度が225℃の高温動作が可能,といったものである.
エム・アールエフはまた,韓国RFHIC社のGaNパワー・アンプ・モジュールを展示した(ただし展示物の撮影は禁止されていた).LTEおよびWiMAXに向けたドハティ方式のパワー・アンプ・モジュールなどである(写真3).
エム・アールエフは米国Skyworks Solutions社と韓国PHYCHIPS社の高周波デバイスも展示した.Skyworks Solutions社は携帯電話端末向けのパワー・アンプとフロントエンドの大手ベンダであり,数量ベースでは世界トップ・シェアを占めるという.展示ブースでは5mm角と小さなパワー・アンプ・モジュール,シリコン・ゲルマニウム(SiGe)低ノイズ・アンプ,無線LANスイッチ,LTE用フロントエンド・モジュールなどを展示していた(写真4).
PHYCHIPS社のコーナではRFIDタグのリーダ用SoC(System on a Chip)「PR9000」を展示していた(写真5).840MHz~960MHzの送受信トランシーバ回路,ベースバンド・モデム回路,フラッシュROM,80C52 CPUなどを内蔵するチップである.
●5.5GHz~10.5GHzの広帯域シンセサイザを実際に動かして見せる
高周波デバイスの開発企業である米国Hittite Microwave社は,発振周波数帯域が5.5GHz~10.5GHzと広い広帯域周波数シンセサイザ・モジュール「HMC-C070」を展示した.展示ブースでは,米国Agilent Technologies社のスペクトラム・アナライザに接続し,7.75GHz付近で発振周波数がわずかに違う二つの状態を連続して切り換えてみせていた(写真6).
「HMC-C070」は,1.2Hzごとに発振周波数を変えられる.出力は21dBm.モジュールにはSiGeトランジスタ,GaAs pチャネルHEMT,インジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタ(HBT)を内蔵した.
エレクトロニクス専門商社のコーンズドッドウェルは,英国e2v technologies社の高速A-DコンバータLSIを展示した.特性の評価ボードにA-DコンバータLSIを搭載した状態で見せていた(写真7).同社のA-DコンバータLSIには,分解能が10ビットでサンプリング速度が5Gサンプル/sの品種や分解能が12ビットでサンプリング速度が500Mサンプル/sの品種などがある.