無線ネットワーク設計の考え方 ―― アクティブRFIDタグを用いて無線システムを構築するには
● RFモジュールを使う場合の注意点
前述のとおり,RF回路に慣れていない技術者がタグやリーダを作ろうとする場合,RFモジュールを使うのが効率的です.しかし,この場合でも,いくつか注意すべきポイントがあります.その代表的な例を次に示します.
1) 電源経由のノイズの回り込みに注意
RFモジュールの中心部分は純アナログ回路です.ここには倍率の高い増幅回路があり,外部からの小さなノイズにも敏感です.ところが,RFモジュールを制御するために,外部にディジタル回路を搭載する必要があります.ディジタル回路とRFモジュールが同一の電源を使用する場合,ノイズがRFモジュールに侵入しないように注意する必要があります.
2) アンテナとRFモジュールの接続方法
RFモジュールには,アンテナを別に用意して接続するものがあります.接続の際,インピーダンスのマッチングを怠ると,電波の送受信を全く行えなくなることもあります. RFモジュールやアンテナのインピーダンスだけでなく,数cmの導線や基板の配線パターンのインピーダンスにも注意を払う必要があります.
3) 金属シールドをうまく使う
RFモジュールは,外部からの電磁ノイズの侵入を少なくするために,金属シールドに覆われていることがあります.RFモジュールの性能を発揮するためには,このシールドを効果的に使用する必要があります.シールドは,電位の安定した低インピーダンスのライン(グラウンドなど)に接続するのが一般的です.回路図上の結線ではすべて同じラインと見なされますが,実物のラインのインピーダンスや電流の流れを考慮すると,アナログ・グラウンド,ディジタル・グラウンド,シャーシ・グラウンドなど,別の意味を持ったグラウンド・ラインが存在します.また,それぞれのグラウンド・ラインの中でも,接続する場所によって効果が大きく変わってきます.これらの考え方や取り扱い方については,カット・アンド・トライも重要ですが,経験に基づいた判断も必要になります.残念ながら,一般的な答えがないのが現実です.もし,この部分で問題解決に時間がかかるようなら,RFモジュールのメーカや,高周波回路に詳しい技術者に早めに相談することをお勧めします.
4) タグとリーダは要求される機能・性能が異なる
製品の性格は,組み込むRFモジュールの扱い方によって決まります.アクティブRFIDタグ・システムでは,タグとリーダという大きく分けて2種類の装置があります.それぞれの役割や機能はシステムによって異なりますが,一般的には,タグとリーダは電源供給の方法や電波の発信頻度など,その作動条件や機能が全く異なります.つまり,同じRFモジュールをタグとリーダの双方に使う場合でも,そのタグとリーダに求められる仕様を十分理解した上で,RFモジュールの使い方を決める必要があります.