パソコン周りのケーブル追放を目指すCertified Wireless USBの動向 ―― USBはWireless USBに置き換わるか?
● UWB通信ではCDMAやOFDMを使用
UWBという無線技術は,1980年代後半から,米国の軍事技術研究の一環として開発が進められました.当初は米国国防総省DoD(Department of Defence)が壁などの障害物を通過してその向こう側に存在する物体の認識を可能にするレーダ技術として研究されていました.2002年2月に連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)がこの技術を民間利用のために使用することを許可したことから,注目を浴びました.余談ですが,米国では特別な免許なしにこの技術を搭載した機器を使用できます.
UWBの伝送方式は,「インパルス・ラジオ方式(インパルス無線)」という,1ns以下の超短パルス波を直接,送信する方式です.通常の無線伝送では,搬送波に変調したデータを載せて伝送しますが,UWBはデータをそのまま伝送することにより,「低消費電力」,「回路の簡素化」を実現できます.また,広帯域の伝送特性を持つとほかの無線通信技術との干渉が心配になります.しかし,UWBは帯域が広い分,各周波数帯域における出力が非常に小さいので,ほかの無線通信技術にとってはノイズ程度にしか影響を与えません.そのため,相互干渉による影響は極めて少ないと理解されています.
この当初の伝送方式は,位置検出やレーダなどには適切とされていますが,最近はマイナな方式となっています.これに替わるものが,MB-OFDM(Multiband-Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式とDS-CDMA(Direct Sequence-code CDMA),もしくはDS-UWB(Direct Sequence UWB)と呼ばれるものです.MB-OFDMやDS-CDMAは,インパルス・ラジオ方式とスペクトラム拡散方式のハイブリッド版変調方式です.
MB-OFDMはIntel社やTexas Instruments社などが提唱・推進しており,DS-CDMAはMotorola社やFreescale Semiconductor社などが提唱・推進しています.