設計の基本は仕様の理解 ――高速シリアル通信を実現するために知っておくべき最低限の知識
2.480Mbpsシリアル通信が普及し始めた
さて,ここからは高速シリアル通信の具体例として,USB2.0について説明していきます.USB 2.0 は,Universal Serial Bus Specification Revision 2.0の略称です.
一般に,USB 2.0と言えばハイスピード・モード(最大データ転送速度480Mbps)に,USB 1.1はフルスピード・モード(同12Mbps)とロースピード・モード(同1.5Mbps)に対応した通信規格の意味で使われていますが,これは正しくありません.USB 2.0規格は,上記のすべてのデータ転送速度を含んでいます.USB 2.0接続が可能な機器の例を図5に示します.このほか,USBの接続容易性を理由に,監視カメラやオーディオ機器などでもUSB2.0ハイスピード・モード対応製品が多数開発されています.
また,USB 1.1とUSB 2.0の通信機能の違いを表1に,USB 2.0のプロトコル階層を図6に示します(トークンやハンドシェークなどの詳細については後述).
〔図5〕USB接続機器
USBを介して接続するパソコン周辺機器の例を示す.
〔表1〕USB 2.0の通信機能
通信機能 | USB 1.1 | USB 2.0 |
トランシーバ | ・48MHzディジタルPLL ・12Mbpsの伝送速度 ・CMOSドライバ ・差動レシーバ |
・480MHzクロック・リカバリ ・スケルチ回路 ・電流モード・ドライバ ・高精度出力抵抗 ・480MHz PLL |
シリアル・インターフェース・エンジン(SIE) | ・12MHzのシリアル-パラレル変換 ・1ビット/クロックのデコード |
・480MHzのシリアル-パラレル変換 ・16ビット/クロックのデコード ・拡張テスト・モード |
アーキテクチャ | ・2Mバイト/sのI/O帯域幅 | ・60Mバイト/sのI/O帯域幅 |
バルク・パケット | ・最大64バイト ・最大17パケット/フレーム |
・最大512バイト ・最大112パケット/フレーム |
アイソクロナス・パケット | ・最大1,024バイト ・最大1パケット/フレーム |
・最大1,024バイト ・最大24パケット/フレーム ・最大3パケット/マイクロフレーム |
〔図6〕プロトコル階層
USB 2.0のプロトコル階層はそれほど深くない.大きく分けると,図のように3階層になる.