設計の基本は仕様の理解 ――高速シリアル通信を実現するために知っておくべき最低限の知識
3)トランスミッタ
対象となる伝送線路を駆動するため,トランスミッタ(送信器)は使用目的によって変わります.例えば,ディジタル画像通信で使用されるSMPTE注1およびDVB-ASI注2では,75Ωの同軸ドライバが必要となります.光ファイバ用モジュールではPECL(positive emitter coupled logic)インターフェースが標準です.PECLはエミッタ・フォロワなので,出力インピーダンスが低く,電圧は負荷に依存せず一定となります.しかし,エミッタ電流を適正値にするバイアス電圧(VT=VCC-2.0V)が必要であり,送信端におけるインピーダンス整合回路が複雑になります.
Gbpsの伝送速度になるとインピーダンス・マッチングが容易なCML(current mode logic)4)が使われます(図3).CMLはコレクタ出力であり,エミッタ電流を定電流回路で固定しています.出力インピーダンスは負荷インピーダンスに対して無視できるほど高いので,「出力プルアップ抵抗=出力インピーダンス」となります.信号の電圧振幅は定電流回路で設定したスイッチング電流値とプルアップ抵抗の積となり,インターフェースがきわめて容易です.
〔図3〕CML回路
CMLはコレクタ出力であり,エミッタ電流を定電流回路で固定している.出力インピーダンスは負荷インピーダンスに対して無視できるほど高いので,「出力プルアップ抵抗=出力インピーダンス」となる.
注1;米国Society of Motion Picture and Television Engineersが策定したディジタル映像に関する規格.
注2;欧州におけるディジタル・テレビ放送の方式.非同期シリアル・インターフェース.