設計の基本は仕様の理解 ――高速シリアル通信を実現するために知っておくべき最低限の知識

掛須利夫

tag: 組み込み 半導体 実装

技術解説 2004年1月30日

2)トランシーバとライン・インピーダンス

 USB 2.0規格では,ライン・インピーダンスとトランシーバについても規定されています.仕様書の内容は,伝送線路理論を学んだことのある技術者にとっては入門レベルにすぎませんが,多くのディジタル回路設計者やファームウェア設計者にとっては難解なようなので,ここで概略を説明しておきましょう.

 480Mbpsの信号を確実に通すためには,グラウンドに対して45Ωのインピーダンスでケーブル・エンドを終端します(図12).このときの差動インピーダンスは90Ωです.これは線間インピーダンスが90ΩのD+とD-のより対線を使用して差動信号で通信することを意味します.

 また,コモンモード(対グラウンド)出力インピーダンスはD+,D-ともに45Ωです.トランシーバはデータ信号線のD+とD-を交互に電流駆動して,JステートとKステート注3を作り出します.USBコントローラLSIのグラウンドに対してD+とD-の直流抵抗も45Ωです.インピーダンスと直流抵抗が同じということは,リアクタンス成分を持たない終端回路であることを意味します.

 45Ωの抵抗で外部終端したとき,ドライバ出力電圧はグラウンドに対してD+とD-とも±400 mV±10%でなければなりません.400mVの電圧値は,ドライバの定電流出力が17.78mAであることを意味します.実際の認証テストでは,このほかのテストを通過していれば,500mVまではウェーバとして認証を取ることができます.ただし,ウェーバは暫定処置なので,今後変わる可能性があります.

f12_01.gif
〔図12〕ライン・インピーダンス
グラウンドに対して45Ωのインピーダンスでケーブル・エンドを終端する.差動インピーダンスは90Ω.

 注3;「Jステート」,「Kステート」は,信号線D+またはD-の駆動状態を示す.速度によってJとKの呼称が逆転する.「Table 7-2. Low-/full-speed Signaling Levels」と「Table 7-3. High-speed Signaling Levels」という箇所で規定されている.

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日