電子機器開発者のための半導体パッケージ熱設計入門 ――待ったなし!SOC & SIPの熱対策

中島宏文

tag: 組み込み

技術解説 2005年7月25日

● 半導体デバイスの接合温度を実測

 実使用状態におけるチップの接合温度は,熱抵抗値θjaと実際の雰囲気温度,消費電力から算出できますが,直接測定することも可能です.

 パッケージ上面に熱容量の小さな細い熱電対を貼り付けて,実使用状態におけるパッケージ表面温度を測定し,この実測値にチップとパッケージ表面の間の温度降下分を加えます.この温度降下分は,パッケージ表面までの熱抵抗θjc×消費電力Wと誤解されがちですが,正しくはΨjt×Wです.Ψjtという熱パラメータは,パッケージの上面(たいていの場合,なつ印面と同義)の温度と接合温度の1W当たりの温度差を示しています(3).1Wで発生する熱量の一部のみがなつ印面に流れているので,熱抵抗値とは異なるパラメータであり,フーリエの法則ΔT=θjc×QのΔTに相当しています.

 表1には,各パッケージのθjcと比較して代表値を示してあります.PBGAは樹脂の熱伝導率が低いためにθjc=4.1deg/Wと高く,ABGAは銅材スプレッダの熱伝導性が良好なためにθjc=0.3deg/Wと低いのですが,自然対流時のΨjtは両パッケージともに0.2℃と同じ値になっています.これは,PBGAではθjcが大きく,パッケージ表面側への熱流Qが小さいのに対して,ABGAではθjcが小さく,Qが大きいためにθjc×Qが同じ値になったのです.

 逆にθjcとΨjtから各パッケージにおける表面トップに流れ出る熱量を知ることができます.例えば,PBGAならばトップ面へ0.05W,プリント基板側へ0.95mW流れることになります.ABGAの場合はトップ面に0.7W流れますが,対流熱伝達による抵抗値88deg/W(外形寸法35mm角の場合)に抑えられて,熱流は再びパッケージ基板を通して実装基板側へ流れ込みます(図17)

 システムにおける実使用状態でチップの温度を測定することは,パッケージが選定された後の作業となるので手遅れと思われがちですが,実測データは将来開発するデバイスの消費電力の推定に役立ちます.また,システム側で消費電力計算が半導体デバイス設計時の見積もりよりも大幅に増えてしまったときは,実使用状態で接合温度が何℃になっているかを知ることは非常に重要です.

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