電子機器開発者のための半導体パッケージ熱設計入門 ――待ったなし!SOC & SIPの熱対策
1. パッケージの低熱抵抗設計
ここからは,QFPとBGAについての低熱抵抗設計の例を述べます.その前に,パッケージに求められる熱抵抗とコストの兼ね合いについて説明しておきます.
● 過度のマージンによるパッケージのコストアップに注意
パッケージに求められる雰囲気への熱抵抗値θjaは,チップの最大消費電力(WMAX)と半導体メーカが開示しているデバイスの最大接合温度(TjMAX),最大雰囲気温度(TaMAX)から次式で求められます.
θja=(TjMAX-TaMAX)/WMAX
ここで,デバイスのTjMAXは,チップが長期にわたって劣化せずに要求特性を満たすことのできる最大の温度なので製品によって異なりますが,150℃や125℃という数値が代表的です.例えば,55℃の雰囲気温度で,最大接合温度の保証値が125℃,最大消費電力が2Wのデバイスには35deg/Wのパッケージが必要になります.
ところで,チップの最大消費電力WMAXはだれが決定するのでしょうか? 最大消費電力WMAXは,シリコン素子上のトランジスタが同時に動作する最大数によって決まります.ここで,チップ上にある全トランジスタが同時にON/OFFするわけではないので,「最大稼働時には全トランジスタの平均何%が動作するから,電流が何A流れるだろう」という推定のもとに,最大消費電力の平均値が算出されています.この「何%のトランジスタが動作するか」という見積もりは,ASICデバイスの場合はシステム側の設計によりますし,トランジスタ1個のスイッチング電流は半導体メーカの仕様で決まります.