プログラマブル・ロジックを集積したSHマイコンのすべて(前編) ――FPGA/PLD市場に参入する日立製作所の取り組み
2001年1月,日立製作所と米国Triscend社は,Triscend社のプログラマブル・ロジック技術を搭載したSHマイコンを共同開発することに合意した.そして現在,日立製作所はプログラマブル・ロジック内蔵マイコンを開発中である.ここでは,日立製作所がプログラマブル・ロジックに取り組むに至った経緯とハードウェア仕様,開発環境などについて解説する. (編集部)
筆者ら(日立製作所)は現在,SHマイコンとプログラマブル・ロジックを1チップに集積した組み込み用マイコンを開発している.これまで日本の会社は,FPGAやPLDなどのプログラマブル・ロジックの開発に積極的には手を出してこなかった.しかし,なぜ今,日立製作所という日本の会社がこの技術に手を出したのか?答えは簡単.それが「必然」だからである.
0.18μmルール以下のプロセス,かつ300mmの大口径ウェハの時代では,一度に大量のチップを生産できる.このとき,セル・ベースICなどでシステムLSIを開発できるのは,これらを大量生産できる大手ユーザに限られてくる.一方,少量・多品種ユーザにとっては,マスク代や試作・開発コストの上昇により,こうしたセル・ベースICの開発がペイしなくなる可能性がある.
後者のユーザはシステム機能の実現のため,標準ロジックICやFPGA/PLDをマイコンに外付けして開発するケースが多い.しかし,本来なら,システム・コスト低減のため,1チップのSOCを開発したいという要求は高いはずである.
こうした背景から,筆者らはFPGA/PLDなどのプログラマブル・ロジックとマイコンを1チップに集積したLSIの開発に取り組んでいる.自分の手元でユーザが定義した機能をプログラマブル・ロジックへコンフィグレーションすることで,ユーザはカスタムのシステムLSIを瞬時に,かつ簡単に実現できる.
本記事では,筆者らが開発しているプログラマブル・ロジック内蔵SHマイコンについて紹介する.前編では,本製品の背景と考えかたをまとめ,製品チップのハードウェア仕様を紹介する.また後編では,本製品をユーザの手元でシステムLSIとして構築するための開発フローと開発環境について説明する.