1.マイコンを使うシステム設計のアプローチ
組み込み用マイコンを使ってシステム設計を行う場合,一般に次の三つのアプローチがある(図1(1)~(3)).
- 組み込み用マイコンと標準ロジックICによる設計
- 組み込み用マイコンとFPGA/PLDによる設計
- ASICによる設計
これらのどのアプローチを取るかは,それぞれのシステムの機能仕様,動作周波数,消費電力,生産数量,過去の資産(ハードウェア,ソフトウェア)などを考慮して,通常,設計者が決めていく(場合によっては政治的圧力で決まる?).しかし,そこにはつねに葛藤があるのではないだろうか?図1に挙げたそれぞれの設計形態の利害得失を表1にまとめた.
〔図1〕システム設計の各種形態
システム設計の方法として考えられる形態を示す.マイコンの外部に標準ロジックICやFPGA/PLDを接続して実現する場合と,ASICを開発する場合がある.なお,(3)のASICによる設計において,すべてを1チップのASICにせず,ユーザ論理を入れたASICをマイコンの外部に接続するケースもある.今後は,(4)のマイコンやASICの内部にFPGAやPLDなどのプログラマブル・ロジックを入れる方法も重要になる.
〔表1〕システム設計形態とその利害得失
システム設計の
形態 |
長 所
|
短 所 |
(1)
組み込み用マイコンと標準ロジックICによる設計 |
- 部品の入手が容易
- 技術情報が豊富
- ICEなどのソフトウェア開発環境が整備されている
- 低消費電力
|
- システム仕様に合ったマイコンがない
- そのため,外付け部品が増え,基板面積が増える
- コスト大
|
(2)
組み込み用マイコンとFPGA/PLDによる設計 |
- 特殊機能をFPGA/PLDで容易に組める
- 開発期間を短縮できる
- 外付け部品を削減できる
- 部品の入手が容易
- 技術情報が豊富
|
- FPGA/PLDチップの分,基板面積増加
- FPGA/PLD内に,マイコンとのバス・インターフェースを組み込む必要がある
- FPGA/PLD内の論理規模が増大すると動作速度が低下する
- マイコンとFPGA/PLDそれぞれの開発環境を整える必要がある
- FPGA/PLDは消費電力が比較的大きい
|
(3)
ASICによる設計 |
- 低コスト
- 大規模なシステムLSIを実現可
- 高速動作
- 低消費電力
|
- 開発工数が多い(機能設計,機能検証,タイミング検証,レイアウト設計,テスト)
- 開発期間が延びやすい
- 開発費用が高い
- 微細化(0.13μmルール以下)により,マスク代やレチクル代など,ウェハ前工程の費用が増大→開発費用の回収のためには,大規模な生産数量
が必要
|
(4 )
FPGA/PLD内蔵マイコンや FPGA/PLD内蔵ASICによる設計 |
- 特殊機能をFPGA/PLDで容易に組める
- 開発期間を短縮できる
- 外付け部品を削減できる
- 部品の入手が容易,在庫管理が容易
- 技術情報が豊富 FPGA/PLD内にバス・インターフェース回路を組み込み済み
- 高速動作 開発費用低減,低コスト,基板面
積小
- 出荷後の保守や機能変更が容易
|
- 消費電力はFPGA/PLDと同等
- マイコンとFPGA/PLDを統合した開発環境が必要
|