プログラマブル・ロジックを集積したSHマイコンのすべて(前編) ――FPGA/PLD市場に参入する日立製作所の取り組み

山崎尊永

tag: 組み込み 半導体

技術解説 2002年1月21日

1.マイコンを使うシステム設計のアプローチ

 組み込み用マイコンを使ってシステム設計を行う場合,一般に次の三つのアプローチがある(図1(1)~(3)).

  • 組み込み用マイコンと標準ロジックICによる設計
  • 組み込み用マイコンとFPGA/PLDによる設計
  • ASICによる設計

 これらのどのアプローチを取るかは,それぞれのシステムの機能仕様,動作周波数,消費電力,生産数量,過去の資産(ハードウェア,ソフトウェア)などを考慮して,通常,設計者が決めていく(場合によっては政治的圧力で決まる?).しかし,そこにはつねに葛藤があるのではないだろうか?図1に挙げたそれぞれの設計形態の利害得失を表1にまとめた.

f01_01.gif
〔図1〕システム設計の各種形態
システム設計の方法として考えられる形態を示す.マイコンの外部に標準ロジックICやFPGA/PLDを接続して実現する場合と,ASICを開発する場合がある.なお,(3)のASICによる設計において,すべてを1チップのASICにせず,ユーザ論理を入れたASICをマイコンの外部に接続するケースもある.今後は,(4)のマイコンやASICの内部にFPGAやPLDなどのプログラマブル・ロジックを入れる方法も重要になる.

〔表1〕システム設計形態とその利害得失

システム設計の
形態
長 所
短 所
(1)
組み込み用マイコンと標準ロジックICによる設計
  • 部品の入手が容易
  • 技術情報が豊富
  • ICEなどのソフトウェア開発環境が整備されている
  • 低消費電力
  • システム仕様に合ったマイコンがない
  • そのため,外付け部品が増え,基板面積が増える
  • コスト大
(2)
組み込み用マイコンとFPGA/PLDによる設計
  • 特殊機能をFPGA/PLDで容易に組める
  • 開発期間を短縮できる
  • 外付け部品を削減できる  
  • 部品の入手が容易
  • 技術情報が豊富
  • FPGA/PLDチップの分,基板面積増加
  • FPGA/PLD内に,マイコンとのバス・インターフェースを組み込む必要がある
  • FPGA/PLD内の論理規模が増大すると動作速度が低下する
  • マイコンとFPGA/PLDそれぞれの開発環境を整える必要がある
  • FPGA/PLDは消費電力が比較的大きい
(3)
ASICによる設計
  • 低コスト
  • 大規模なシステムLSIを実現可 
  • 高速動作
  • 低消費電力
  • 開発工数が多い(機能設計,機能検証,タイミング検証,レイアウト設計,テスト)
  • 開発期間が延びやすい
  • 開発費用が高い
  • 微細化(0.13μmルール以下)により,マスク代やレチクル代など,ウェハ前工程の費用が増大→開発費用の回収のためには,大規模な生産数量 が必要
(4 )
FPGA/PLD内蔵マイコンや FPGA/PLD内蔵ASICによる設計
  • 特殊機能をFPGA/PLDで容易に組める  
  • 開発期間を短縮できる  
  • 外付け部品を削減できる
  • 部品の入手が容易,在庫管理が容易
  • 技術情報が豊富 FPGA/PLD内にバス・インターフェース回路を組み込み済み
  • 高速動作 開発費用低減,低コスト,基板面 積小
  • 出荷後の保守や機能変更が容易
  • 消費電力はFPGA/PLDと同等
  • マイコンとFPGA/PLDを統合した開発環境が必要
組み込みキャッチアップ

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