プログラマブル・ロジックを集積したSHマイコンのすべて(前編) ――FPGA/PLD市場に参入する日立製作所の取り組み
6.CSLセルの構造
CSLセルは図8に示すような回路になっている.LUTの内容や信号をフリップフロップを通すかどうか,あるいはフリップフロップのクロック・エッジの向きやイネーブル制御などを初期化時のコンフィグレーションで設定できる.
このCSLセルを組み合わせることで,任意の論理を構成する(表3).
セル内のLUTは,4入力1出力の真理値表を実現できるので,この範囲の任意の組み合わせ回路は1個のCSLセルで実現できる.5入力までなら2個のセルで任意の組み合わせ回路を組める.6~9入力の組み合わせ回路の一部は2個のセルで実現できる.
1ビットの加減算回路は,セル自身がキャリ伝搬回路を備えているため,1個のセルで実現できる.これを組み合わせると,加算器,減算器,インクリメンタ,デクリメンタ,アキュムレータ,アップ/ダウン・カウンタを実現できる.
1ビットの乗算回路もセル1個に対応し,加算器との組み合わせで乗算器を構成できる.
LUTは4ビットのアドレスを持つRAMに相当するので,CSL内にROMやRAMを構成することができる.16ワード×1ビットのROMやRAMであれば,1個のセルで実現できる.また16ワード×1ビットのデュアル・ポートRAMも2個のセルで実現可能である.
順序回路やレジスタについては,CSLセル内のフリップフロップで実現する.このフリップフロップは,クロック・エッジの立ち上がリ/立ち下がりを選択でき,クロック・イネーブル制御を行える.また,非同期でセット/クリアすることもできる.
〔図8〕CSLセル
CSLセルは,4入力のLUTとフリップフロップにより構成される.
〔表3〕CSLセルで構成できる論理回路の例
1 |
機能
|
消費
セル |
内容
|
備考
|
組 み 合 わ せ 回 路 |
4(以下)入力出力
5入力1出力 6~9入力1出力 |
1 |
任意の組み合わせ回路
任意の組み合わせ回路 いくつかの組み合わせ回路 |
|
算 術 演 算 器 |
1ビット全加算器 1ビット全減算器 1ビット全加減算器 1ビット乗算器 |
1
1 1 1 |
SUM=X+Y,スルー付き
SUM=X-Y,スルー付き SUM=X±Y MUL=X×Y |
加算器,インクリメンタ,アップ・カウンタ,アキュムレータ
減算器,デクリメンタ,ダウン・カウンタ,コンパレータ 加減算器,インクリメンタ,デクリメンタ,アップ/ダウン・カウンタ 乗算器(加算機と組み合わせて実現) |
メ モ リ |
RAM 16×1
RAM 32×1 デュアルポートRAM 16×1 ROM 16×1 ROM 32×1 8ビット・シフタ |
1
2 2 1 2 1 |
16ワード×1ビットRAM
32ワード×1ビットRAM 16ワード×1ビット・デュアルポートRAM 16ワード×1ビットROM 32ワード×1ビットROM 8ビット・シリアルIN/OUT |
ライト・コンテンション・チェック付き ロード機能,任意位置タップ出力 |
順 序 回 路 |
── |
─
|
立ち上がり/立ち下がりエッジ・トリガ
クロック・イネーブル入力 非同期セット・クリア入力 |