FPGA活用回路&サンプル記述集(3) ―― ビデオ信号処理回路
tag: 半導体 電子回路 ディジタル・デザイン
技術解説 2009年3月25日
事例2.4ライン構成のライン・バッファ
大中 庸生
外部回路
- 回路図:なし
- 主要部品:なし
- Verilog HDL:リスト2-1,本誌Webページからダウンロード
- 外部入力:なし
- 外部出力:なし
- 内部入力:RESET,WA,WEN,WCK,WD,RA,REN,RCK
- 内部出力:RD0,RD1,RD2
- パラメータ:なし
- Altera社,Quartus II
バッファ(Buffer)を英和辞書的にいえば「緩衝物」,「緩衝器」となるようです.こん包材に例えれば,気泡緩衝シートの役割を果たすものです.つまり,生活リズムなどが異なる二人の間に挟まって,「まあまあ」とやってくれる苦労人のことだと想像すれば,1歩そのイメージに近づいたような気がしてきます.
電子機器の世界においても,入力機器と出力機器というのは,そのままでは結構仲が悪いことが多いものです.ですから,機器の内外のどこかに,何らかの調停役,つまりバッファが入っているものです.
画像処理の世界でも,ある処理系から別の処理系へデータを受け渡そうとすると,両者が,嫌になるほど勝手なことを主張して,1歩も譲らず,困ってしまうことがよく起こります.こういうときに,頼りになるのがバッファです.
仲の悪い二人は,直接顔をあわせるのを避ける,つまりA氏からB氏へ直接荷物(データ)を手渡さないのが上策です.そのための方策の一つとしては,A氏が荷物をいったん倉庫に収めておき,時間帯をずらしてB氏が取りに来るということが考えられます.そうしておけば,A氏の荷物の渡し方,速さ,手順,方向性,時間帯など,たとえそれがB氏の気に入らないことだらけであったとしても,B氏はB氏で,自分のペースで荷物を受け取って帰れます(図2-1).この場合,倉庫がバッファの役割を果たしたわけですが,電子デバイスにおける「倉庫」といえば,もう,なんといっても「メモリ」でしょう.
図2-1 すれちがう二人...バッファの役割は大きい
● ビデオのライン・バッファとフレーム・バッファ
ラスタ・スキャンを行うディスプレイ(CRTテレビなど)における画像バッファとしては,どの範囲でメモリに一時蓄積するかによって,ライン・バッファとフレーム・バッファが用意されます.
ライン・バッファは1本以上のビデオ・ラインを一時蓄積する倉庫の働きをします.一方,フレーム・バッファは1枚以上のビデオ・フレームを一時蓄積する倉庫の働きをします.それぞれの特徴は,下記の通りです.
ライン・バッファの特徴は,
- フレーム・バッファに比べてメモリ容量が小さい.従って高速なメモリを使用できる.
- 垂直方向の蓄積能力が限られているため,ラインをまたぐ縦の調停は苦手.入力側と出力側で垂直同期は確保しておく必要がある.
フレーム・バッファの特徴は,
- 十分な容量を持つメモリ・デバイスが必要.
- 1枚以上のフレームを蓄積できるので,全く異なるビデオ・タイミングの入出力を調停できる.
● FPGAの内部メモリによるライン・バッファ
近年では,比較的低価格のFPGAデバイスにもライン・バッファとして十分な容量のメモリが内蔵されています.FPGAの内部メモリを使用したライン・バッファ・システムで事足りると,外部のメモリ・デバイスが不要となり,コスト・ダウンできます.また,外部メモリが不要ということは,FPGAの使用ピン数を削減でき,これも大きなコスト・ダウン要因となります.
FPGAの内部メモリは容量もさることながら,独立にアクセスできるブロック数が多いため,何系統ものライン・バッファを随所に設けることも可能です.