磁界結合を利用した"ワイヤレスICE"を開発 ―― マイコンのデバッグ用I/O信号が不要になる
● 小型の送受信機に適したパルス方式を選択
磁界結合を用いた無線通信は,有線のデータ伝送とは異なります.送信信号そのものではなく,その微分波形が受信信号として生じるため,何らかの方法によるデータの変調および復調(再生)が必要となります.変復調方式には,非接触ICカードなどで一般的に採用されている搬送波を用いる方式(搬送波方式)と,パルスを用いる方式(パルス方式)があります(図7を参照).
通常の無線通信では,搬送波と呼ばれる正弦波にデータ信号を乗せて(変調)通信を行う.RFIDであれば,例えば13.56MHzの信号の振幅もしくは位相を変化させることで情報を伝送する.一方,パルス方式は搬送波を必要としない.簡単なディジタル回路で送受信機を構成できる,送信信号スペクトラムが広帯域に拡散されている,などの特徴を持つ.
双方とも利点と欠点がありますが,本システムでは次の理由からパルス方式を採用しました.
1) チップ面積は小さい方が安い
まず,チップ面積の増加による価格上昇を防ぐために,Siチップ上に搭載できるコイルのサイズには自然と制約があります.今回は,チップ上に0.6mm角の非常に小さなコイルを搭載しました.このように小さなコイルを用いてデータ伝送を行うため,受信側コイルの両端に発生する電圧信号は非常に小さな値となります.