磁界結合を利用した"ワイヤレスICE"を開発 ―― マイコンのデバッグ用I/O信号が不要になる
表2に示すように,デバッガ接続コネクタを削減できたり,プリント基板の配線スペースの制約がなくなるなど,原価低減や小型化にも寄与します.
組み込みシステム | マイコン | 副次的効果 | |
メ リ ッ ト | ・エミュレータ接続コネクタが不要(スペース,コスト削減) ・プリント基板の配線や配線領域,切り替え回路などの確保が不要 ・マイコンのパッケージ上面を利用するためプリント基板のレイアウト自由度が高い | ・I/Oピン(1~7本,デバイス仕様による)がエミュレータに占有されない.ユーザI/Oとして100%利用可能 ・保守,改良などのために,マイコンを外すことなくプログラムの書き換えや評価が可能 | ・通信手段が超近距離最適化された専用通信になり,隠匿性があるため,傍受が困難 ・通信系が磁界結合であるため,組み込みシステムとエミュレータ・システムの電源や信号系が分離される.つまり,電位差があっても電流の回り込みによる故障が起きにくい |
もう少し詳しく,磁界結合無線デバッグ・システムの構成について見てみましょう.
● 無線プローブとマイコンにコイルを取り付ける
図3に示すように,非接触通信を実現しているのは,無線プローブとマイコンのそれぞれに設けた小さなコイルです.今回の試作では,3個のコイルをデバッガ側の無線プローブとマイコン側のチップの双方に内蔵しています.無線プローブに設けたコイルは1.0mm角の小コイル,マイコンに内蔵したコイルは0.6mm角の微小コイルです.
システム構成と非接触通信を実現している場所を説明している.非接触通信を行っている場所はマイコンのパッケージ上面であり,非接触通信は無線プローブとマイコンに設けた小さなコイル(磁界結合)が担っている.今回の試作では,3個のコイルをデバッガ側の無線プローブとマイコン側のチップのそれぞれに内蔵した.