磁界結合を利用した"ワイヤレスICE"を開発 ―― マイコンのデバッグ用I/O信号が不要になる

菅原俊彦,石黒仁揮

tag: 組み込み 半導体

技術解説 2007年5月31日

●○● Column1 ●○●
無線デバッグ・システムに採用した磁界結合の技術背景と特徴

 最近の電子機器,特に携帯機器は,小型化が求められています.そこで,一つのLSIパッケージの中に多数のシリコン(Si)チップを積層して,小型で高機能なロジックあるいは大容量のメモリを実現できるSiP(System in Package)と呼ばれる技術が注目を集めています.このSiP技術は,実際に適用されるようになってきています.積層したSiチップ間の配線は,ボンディング・ワイヤと呼ばれる金属ワイヤ(アルミ線または金線)でチップ間を接続することで実現されます.しかしこの方法だと,寄生インダクタンスや寄生容量により信号伝送速度が制約されます.より広帯域,低電力,低コストで積層チップ間の信号伝送を行うための技術として,さまざまな方法が提案されています.

 慶應義塾大学理工学部 電子工学科では,以前から微小コイル(数十μm)を用いた磁界結合パルス伝送方式で積層チップ間(距離は数十μm)の信号伝送を無線で行うことを提案していました.そして実際に,テスト・チップで1T(テラ)bpsの伝送が行えることを確認しました.

 今回の無線デバッグ・システムにおける信号伝送方式は,これまで数十μm程度に限定されていた通信距離を数mmまで延ばすことで,LSIパッケージの外部からチップ内部の信号に無線でアクセスできるようにしたものです.単純に距離を延ばすには,大きなコイルを用いればよいのですが(極端な例では,非接触ICカードで用いられているような数cmサイズのコイル),SiチップやLSIパッケージのサイズが大きくなるとコストアップにつながります.また,コイルの寄生容量が大きくなり,通信速度も制限されます.

 今回開発した無線デバッグ・システムでは,高速にデータを伝送できる潜在能力(1Gbps),および小型であるという特徴を保ったまま,通信距離の延長を目指しました.そのため,コイルのサイズを1mm以下とする必要があり,加えて扱う信号の振幅が非常に小さく(数mV~数十mV)なりました.この問題は,送受信機内部に増幅器やオフセット除去用の回路ブロックを搭載することなどで対処しています.

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