モバイル・タブレットやシンクライアント,電子ブック・リーダなどの分野でi.MXプロセッサの需要が拡大 ―― FTF(Freescale Technology Forum) Japan 2010

北村 俊之

tag: 組み込み 半導体

レポート 2010年9月24日

 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは2010年9月14日,「Powering Innovation」をテーマに,顧客やパートナ企業向けの技術コンファレンス「FTF(Freescale Technology Forum) Japan 2010」を目黒雅叙園(東京都目黒区)にて開催した(写真1).本コンファレンスは,20以上の技術セッションと,フリースケールやパートナ各社が展示やデモンストレーションを行うテクノロジ・ラボなどで構成されている.

写真1 会場受付の様子

●クラウド・コンピューティングやスマート・メータが成長を後押し

 午前中のジェネラル・セッションでは,米国Freescale Semiconductor社 上席副社長兼チーフ・セールス・アンド・マーケティング・オフィサーのアンリ・リシャール氏が基調講演を行った(写真2).同氏は,リーマン・ショック以降に得た教訓をベースに徹底した顧客満足度調査を行った結果,車載,通信(ネットワーク),コンシューマ,インダストリアルなどの分野にフォーカスして,技術開発を推進しているという(写真3).同氏は,今後の10年に必要な技術として,Connected Intelligenceを挙げた.そして,さまざまなデバイスとインフラが接続される時代において,同社が非常に有利な立場にあることを強調した.今後成長する世代は,可処分所得が増加し,新しいパラダイムに対して抵抗を感じていない.そのためネットワーク分野の今後10年の成長には大きな期待が持てるとした.

写真2 基調講演を行う米国Freescale Semiconductor社 上席副社長兼チーフ・セールス・アンド・マーケティング・オフィサーのアンリ・リシャール氏

写真3 同社のフォーカスしている分野

 同氏によると,車載分野においては100を超える同社のマイコンが採用されており,この分野ではリーディング・カンパニの地位を堅持しているという.特にDSIコンソーシアムに参加して,次世代エア・バッグの開発,レーダ・ベースのアクティビティ・セーフ・システム,ハイブリッド電気制御などの技術で同社が貢献していることをアピールした.

 ネットワークの分野ではトラフィックが年々増大しているが,この分野では70%が同社の技術を採用し,RF基地局のほとんどが同社の製品を利用しているという.

 コンシューマ分野では,クラウド・コンピューティング時代の到来を迎え,モバイル・タブレットやシンクライアント・システムにおいて今後マイコンの需要が増大すると予測した.特にeReaderと同社が呼んでいる電子ブック・リーダの分野で,i.MXアプリケーション・プロセッサが採用されるという.また,これまではモバイル・デバイスが成長の原動力であったが,今後は家庭内の冷蔵庫や洗濯機などの家電製品(固定機器)がインターネットにつながり,新たな原動力になるとしている.

 インダストリアル分野では,日本は170兆円を超える投資が行われており,2030年までに家庭のCO2排出量の50%削減を目標として掲げている.同社では,電力会社などに対してスマート・メータ採用のためのリファレンス・デザインの提供などを行っているという.

 まだまだ経済的には危機的な状況下にあるが,今後もさまざまな技術開発を推進していくとともに,日本のルールに則った形で支援していきたいとして,基調講演を締めくくった.

●マルチコア分析ツールを使って実行時間を73%に短縮

 続いて登壇したフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 代表取締役専務の伊南 恒志氏は,グローバル市場で迅速に戦えるソリューションの重要性を強調した(写真4).そして,車載,ネットワーク,コンシューマ,インダストリアルの各分野における,同社の新しい製品やサービスを紹介した.

写真4 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 代表取締役専務の伊南 恒志氏

 特に興味を引いたのは,英国CriticalBule社のマルチコア分析ツールを使ったデモンストレーションである(写真5).本分析ツールを使用することで,開発の初期段階で処理の並列化の見極めが可能になるという.手順はこうだ.まずシングル・コアからマルチコアに移行するにあたって,実行回数の多い関数をタスクに分割する.このままではデータに依存性があるため,マルチコア上で実行しても適切な並列処理は行われない.そこで,データの依存性を解析し,補正することで効率の良い並列処理が可能となる.この時点で,実行時間は約40%短縮される.さらにタスクを調整することにより,コアを四つに増やすことができ,実行時間も73%まで短縮できたという(写真6).

写真5 CriticalBule社のマルチコア分析ツールのデモンストレーション

写真6 マルチコア分析ツールのマルチコア化のプロセス

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