磁界結合を利用した"ワイヤレスICE"を開発 ―― マイコンのデバッグ用I/O信号が不要になる
組み込みシステムでは,ハードウェアとソフトウェアの開発が必要になります.組み込みシステムのソフトウェアの大半は,機器の内部に組み込まれた状態になります(一般的なソフトウェアと区別するために,ファームウェアと呼ぶ場合もある).ソフトウェアが組み込まれるというのは,プログラムがシステム中の半導体デバイス(1回書き込み型ROMやマスクROM,フラッシュROMなど)に格納されることを意味します.
「組み込みシステム」とは何? 「開発ツール」とは何? と思われる読者の方もいらっしゃると思います.まず,組み込みシステムにおける開発のイメージから紹介しましょう.
1.組み込みシステムの一般的な開発手法
● 100万行以上へと増殖する組み込みソフトの規模
組み込みシステムは,身近な例では時計や電卓,携帯電話,エアコン,炊飯器,テレビ,リモコンなど,家電製品から自動車,産業用途まで,幅広く使われています.
組み込みシステムに使用されるマイコンの数を大ざっぱに数えるなら,携帯電話は5~10個前後,エアコン1セット(室内機,室外機,リモコン)は3個以上,テレビなどのリモコンは1個,最近の高級車は1台に100個を超えると聞いています.
近年は,これらの製品に組み込まれるソフトウェアの規模が増大し,最終製品の品質や保守,開発コストへの影響が無視できなくなっています.なかでも比較的大規模なソフトウェア開発を行うのが携帯電話です.携帯電話に内蔵されているソフトウェアの規模は,100万ステップを超えています.電話以外の機能として,アドレス帳やメーラ,Webサイトの閲覧,カメラ(静止画,動画),GPS(Global Positioning System),赤外線送受信,辞書などがあります.これらを合わせると,少し乱暴ですが,1ステップを2バイトに換算して200万バイト(2Mバイト)のプログラムやデータが,携帯電話に格納されているのです.これは10年前のパソコンが処理する規模に相当します.