磁界結合を利用した"ワイヤレスICE"を開発 ―― マイコンのデバッグ用I/O信号が不要になる
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組み込みシステム分野におけるエミュレータの開発動向
インサーキット・エミュレータ(ICE)は,組み込みシステム分野では,単にエミュレータと称されます.エミュレータの原理は,1970年ころIntel社から発売された電卓向けマイクロプロセッサ用として登場したと聞いています.原理的には35年以上も変わっていませんが,機能や性能は,デバイスの進化とともに大きく変遷してきました.
例として,日本の半導体メーカ製エミュレータの対応クロック周波数や価格,オンチップのROM容量の変遷を図Bに示します.ラフにまとめたので,精度というよりも歴史的変化の観点から見てください.
エミュレータ製品(マイコン内蔵ROMサイズ,マイコン・クロック周波数,エミュレータ価格)の変遷を示す.30年間で,ROMサイズは1,000倍,クロック周波数は50倍,エミュレータ価格は1/3となっている.ROMサイズ1Kバイト以下やクロック周波数kHzオーダの仕様,輸入エミュレータが数百万円した1970年代前半は無視した.マイコン・データ・バス幅が4ビットから8,16,32ビットへと拡大した点には触れていない.
ここで示す周波数は組み込みシステムにおける値です.コンピュータ用などの水冷機構が使えるデバイスとはけたが違います.周波数当たりで見ると,1970年台後半は1MHzで75万円(75万円/MHz)レベルなのが,2000年代は50MHzで25万円(0.5万円/MHz)となっています.
このように,最近のエミュレータへの要求は,低コストと高機能・高性能に2極化されていると理解して,筆者らは製品開発を進めています.デバイスの微細化や高機能,高性能化に伴って,次のような項目が変化のポイントとなります.
・アプリケーション・ソフトウェアの規模や開発コストが増大(ハードウェアとソフトウェアを1人で全部開発していた時代からチームによる分担開発へ)
・半導体デバイスのクロック周波数やバス周波数の上昇,低電圧化,回路の大規模化
・エミュレータ開発支援工程が拡大し,デバッグや最終評価,企画時のマイコンの性能測定なども対象になった.