無線通信の基礎知識 ―― 組み込み機器に無線機能を付けるために知っておこう

安井 吏

tag: 組み込み 電子回路

技術解説 2007年4月12日

● 開放されている2.4GHz帯のISMバンド

 表1の中で,近年普及の著しい無線LANやBluetooth,ZigBeeといった民生用無線通信規格の多くは,2.4GHz帯のISMバンドと呼ばれる周波数帯を使用しています.ISMとはIndustrial, Scientific, Medicalの頭文字を取ったもので,産業用途や科学研究用途,医療用途に開放されている周波数帯のことです.

 ISMバンドは,2.4GHz帯以外にもいくつかの周波数帯に存在しています.身近な例では,ラジコンやトランシーバなどのおもちゃが27MHz帯のISMバンドを使用しています.電子レンジは2.4GHz帯ISMバンドの強力な電波を使って食品を加熱しています.

 このように民生用無線通信機器に利用できる周波数帯には2.4GHz帯のISMバンドのほかにもいくつかの周波数帯がありますが,特に2.4GHz帯に利用が集中しているのは以下の理由が考えられます.


  1. 多くの国でこの周波数帯が開放されており,同一規格の無線通信機器を国際的に使用できる

  2. 利用できる周波数帯がある程度広く,高速・広帯域通信にも対応できる

  3. 現在の技術で,低コストと機器やアンテナの小型化を両立することのできる適度な周波数である

 2) について補足すると,無線通信によって音声や映像,ディジタル・データなどの情報を伝送しようとする場合,使用する電波は単一の周波数ではなく,伝送する情報量に応じて,周波数の幅(帯域)が必要になります.従って,利用できる周波数帯が広いほど,より大量の情報を高速に伝送できます.なお,USBやEthernetなどの有線通信の場合は無線に比べて多くの帯域を利用できるので(電波として放射されることがないので,法的な規制は受けない),無線通信に比べて大量のデータを高速に伝送しやすいと言えます.

 2.4GHz帯のISMバンドを利用する無線通信機器が普及する一方で,2.4GHz帯への過度の集中によって,異なる通信システムの間の相互干渉などが問題となってきています.通信のさらなる高速化などへの要求と相まって,今後はほかの周波数帯の利用も加速しそうです.そのための技術開発や周波数帯割り当ての改正が待たれます.

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