無線通信の基礎知識 ―― 組み込み機器に無線機能を付けるために知っておこう
● プロトコル処理:異なるコンピュータ間の通信手順
情報通信におけるプロトコルという言葉には広範な意味が含まれています.プロトコルはおおまかには,異なるコンピュータの間の統一的な通信手順や規約のことです.プロトコルに基づいてデータ・パケットの構成・解読処理を行うのがプロトコル処理です(図8).プロトコル処理を実現するソフトウェアをプロトコル・スタックなどとも呼びます
届けたいデータは,途中で破損や紛失が起こらないように段ボール箱に詰め,送り主と宛先がわかるように荷札を付けて送る.実際に輸送する手段がトラック便でも航空便でも,同じ手続きで送ることができる.
これと同じように,送りたいデータが途中でエラーを起こしたり失われたりしないようにTCPのパケットに詰める.さらに,これを世界中どこへでも共通に届けられるようにIPのパケットに乗せる.こうしておけば,送り側と最終的な受け側は,データの途中経過を気にすることなく,共通の手順で確実にデータを送受信できる
例えばインターネットでは,TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)というプロトコルが一般に使用されます.IPでは,複数のコンピュータで構成されるネットワークの中からIPアドレスに基づいてコンピュータを特定し,そのコンピュータとパケットのやりとりを行う手順やデータ構造が規定されています.IPを使えば,世界中の膨大な数のコンピュータから特定のコンピュータを選んで,基本的なデータのやりとりを行うことができます.TCPはIPの上の階層に位置するプロトコルで,IPを利用してデータの欠落やエラーのない伝送を行う手順が決められています.従ってTCP/IPを利用すれば,インターネットに接続された世界中のコンピュータと,エラーのない確実なデータ通信を行うことができます.