無線通信の基礎知識 ―― 組み込み機器に無線機能を付けるために知っておこう
● メディア・アクセス制御:相手機器とやりとりする
メディア・アクセス制御は,上位のアプリケーションからの要求に応じて,決められた手順や形式に従ったデータを通信相手の機器とやりとりするための処理です.専用のディジタル回路やCPU上で動くプログラムとして実現されます.具体的な処理としては,データをフレームと呼ばれる,ある決まった時間単位に分割・再構築したり,データを送信するタイミングを制御したりというものです.会話に例えるなら,言葉の基本的な文法処理のようなものでしょうか.わたしたちが他人と会話する際には,主語や述語,副詞などを文法にのっとって正しく組み立てないと会話が成立しません.通信においても,お互いの基本的なデータの形式や伝送手順を守って統制を取る必要があります(図7).
しかし,わたしたちが会話を行うときには,いちいち意識的に,主語や述語などの文法構造のレベルで文を組み立てる作業を行っていないはずです.伝えたいことを頭の中に思い描くと,あとの細かい文法を考えなくても,頭のどこかで半自動的に文法処理を行ってくれるのではないでしょうか.これと同じように,Webブラウザやメーラなどのアプリケーション・ソフトウェアは,このメディア・アクセス制御の処理を意識する必要はほとんどありません.細かいタイミングの制御やフレームの分割・再構築など,メディア・アクセス制御の処理はアプリケーション・ソフトウェアの見えない部分で行われます.