無線通信の基礎知識 ―― 組み込み機器に無線機能を付けるために知っておこう
● 信号処理:変調や復調,エラー訂正を行う
信号処理部は,無線通信機器特有の処理を行うベースバンド処理とも呼ばれる部分です.通常はCPUやDSPの上で信号処理用のプログラムを動作させて実現します.場合によっては,専用のディジタル回路やアナログ回路の助けを借りることもあります.
この部分では,ディジタル・データを送信信号に乗せたり(変調),逆に受信信号からディジタル・データを取り出したり(復調)します.また無線通信は,有線通信と比べて,途中でデータに誤り(エラー)が発生する確率が高いということを必ず考慮しなければなりません.無線通信において発生してしまったエラーを訂正する処理も,この部分で行うことが多いようです.
エラーの訂正は,送信側の処理で本来の情報に冗長性を付け加えることで可能となります.例えば"1010"という4ビットのデータを送ろうとする場合,同じデータを3回続けて送るとします."1010 1010 1010"というデータが受信側に送られますが,途中,突発的な妨害波などが原因で1ビットのエラーが発生し,"1010 1000 1010"というデータに化けてしまったと仮定しましょう.受信側では,送信側が同じデータを3回続けて送ってくることを知っているので,受信したデータにはどこかにエラーがあることを検知します(エラー検出).そして三つの4ビット・データを見比べることにより,多数決の考え方で本来のデータは"1010"らしいということが分かり,"1010"を正しいデータとして採用します(エラー訂正).
実際に無線通信機器で使われているエラー訂正はこの例よりもずっと複雑で高度なものですが,送信データに冗長性を加えて受信側でデータのエラー検出とエラー訂正を可能にするという点は変わりません.また,エラー訂正を使用する場合は送信データに冗長性を加えるため,伝送効率が多少低化します.