無線通信の基礎知識 ―― 組み込み機器に無線機能を付けるために知っておこう
● 電波に情報を持たせる「変調」と取り出す「復調」
ところで,わたしたちが声を使ってほかの人と会話するとき,言葉を使ったり声に抑揚を付けたりして自分の気持ちを相手に伝えます.このときの声帯の振動は,決して単調な振動ではなく,音の強弱や高さなどをコントロールして,かなり複雑に振動しているはずです.
同じように,電波を使って実際に情報を伝達するためには,一定で単調な振動ではなく,周波数や強度をある程度変化させることによって電波に意味のある情報を乗せる必要があります.このような操作を変調といいます.
また,会話の中で相手の話を聞くときには,無意識のうちに相手の声の高さや強弱から相手が伝えようとしている言葉をくみ取っています.これと同じように,受信した電波の強弱や周波数などの変化から送信側が伝えようとしている情報を取り出す操作を復調といいます(図3).
単調な電波では情報が伝わらない.電波に情報を乗せるため,伝えたい情報に応じて電波の形を加工する.これを変調という.このように情報が乗った電波から,元の情報を取り出す操作を復調という
● 電波は周波数が違うと混ざらない
さらに例え話を続けると,騒がしい酒場など,たくさんの人がざわめいている環境でも,人は,そのざわめきの中から今自分が会話している相手の声を聞き分けることができます.おそらく,相手の声の特徴を頼りにして,聞き取りたい声だけを抽出する処理が脳の中で無意識のうちに行われているのでしょう.これと同じように,電波を使った通信でも,さまざまな機器から発せられた電波の中から,自分の通信相手の発した電波だけを取り出して受信することができます.このときに手がかりとするものの一つは周波数です.