無線通信の基礎知識 ―― 組み込み機器に無線機能を付けるために知っておこう
6.無線通信モジュールを用いた設計の注意点
● 外部アンテナと単に接続するだけではいけない
無線通信モジュールの中にはアンテナが内蔵されておらず,外付けする必要のあるものも存在します.アンテナ外付けの無線通信モジュールは,アンテナの種類や配置に自由度がある一方で,アンテナの配置やモジュールとアンテナの間の基板パターン設計によっては,十分な性能を引き出せない可能性があります.
アンテナの周囲に金属などでできた障害物があると,アンテナの特性が変化するので,アンテナの配置には注意する必要があります.また,無線通信モジュールのアンテナ端子とアンテナの間の配線は特に要注意です.この配線を50Ωなどの決まった特性インピーダンスを持つ伝送線路にしないと,アンテナと無線通信モジュールの間で信号がロスして通信距離が短くなったり,多重反射を起こして波形が乱れたりするなど,伝送性能が劣化する恐れがあります(上掲のコラムを参照).
決まった特性インピーダンスを持つ伝送線路としては,マイクロストリップ線路(図9)という構造のプリント基板の配線パターンや同軸ケーブルなどが用いられます.
特性インピーダンスは基板の配線パターンの形状(パターン幅Wと基板の厚さh),基板材料の比誘電率εrによって決まる
また,無線通信モジュールによってはアンテナとの間にマッチング回路を設けることが推奨されている場合があります.その場合は,データシートなどに従ってマッチング回路を挿入します.数GHzもの周波数になると,同じ素子値の部品でもメーカや種類が違うと特性に違いが出てきます.モジュール・メーカが特定の部品を推奨している場合は,なるべくそれを使うようにします.また,基板の配線パターンも推奨のものがあればそれを参考にします.