無線通信の基礎知識 ―― 組み込み機器に無線機能を付けるために知っておこう
無線通信規格 | 周波数帯 |
特定小電力無線 | 400MHz帯など |
携帯電話 | 800MHz帯, 1.5GHz帯, 2.0GHz帯など |
RFID | 13MHz帯, 900MHz帯, 2.4GHz帯など |
Bluetooth | 2.4GHz帯 |
ZigBee | 2.4GHz帯 |
無線 LAN(IEEE 802.11b/g) | 2.4GHz帯 |
無線 LAN(IEEE 802.11a) | 5.2GHz帯 |
WirelessUSB (Cypress Semiconductor社) | 2.4GHz帯 |
表1に示されているもの以外にも民生用無線通信機器で利用が許されている周波数帯はいくつかありますが,現在の技術では民生品として安価な装置で利用できる周波数はせいぜい10GHz程度までです.周波数の低い方ではアンテナのサイズを大きくする必要があるので,安価で小型の無線通信機器に使える周波数帯は数100MHz~数GHzまでの,電波法で使用が認められた周波数帯ということになります.このことから,電波は限りある貴重な資源であるということができ,そのような電波資源をいかに効率的に利用するかが無線通信を考える上での大きなテーマとなっています.
● 身近に使われている無線通信の規格
近年,こうした無線通信機器を実現するための民生用ディジタル無線通信規格が急激に普及しています.代表的な例を挙げると,IEEE802.11a/b/gとして知られる無線LANや,携帯情報機器向けの近距離無線通信規格であるBluetooth,低速である代わりに低コスト・低消費電力を目指したZigBee,赤外線の近距離データ通信規格であるIrDAなどがあります(表2).
無線通信規格の名称 | 特 徴 |
Bluetooth | 近距離で比較的低速な無線通信規格. 携帯電話やPDAなどの携帯情報機器や家庭用ゲーム機のコントローラなどへの採用が多い |
無線 LAN(IEEE 802.11a/b/g) | 高速・広帯域の無線通信規格.従来のEthernetなどによる有線LANの置き換えを担う. 近年普及し始めたIEEE 802.11aや同11gの伝送速度は,最高54Mbps(理論値)と高速である. しかし,日本では電波法に基づく規制のため,IEEE 802.11aを屋外で使用できない |
ZigBee | 低速ではあるが,コンパクトかつ低消費電力であること(乾電池で数年間の稼働)を目指した無線通信規格. 大量のデータをやりとりする用途には向かず,リモコンやセキュリティ機器,ガスや水道メータなどの遠隔測定,ワイヤレス・センサなどの応用を想定している |
IrDA | 赤外線を使用する無線通信規格.1m以内の至近距離の通信で,かつ1対1の通信となる.パソコンとPDAの間の通信に使われているほか,最近では携帯電話に搭載され,メールや電話帳などの交換に使用されている |
Certified Wireless USB | その名の通り,USBの無線版を標榜した規格.高速なデータ伝送を行うため,UWB(Ultra Wideband)という新たな無線伝送の方式を採用している.各国の電波利用規制の緩和も進み,今後の普及が期待されている. 似たような名称で,Cypress Semiconductor社が提唱するWirelessUSBという規格もあるが,これとは別物なので注意.Cypress社のWirelessUSBは,マウスやキーボードなど,低速なインターフェースの無線化に用いられている |
RFID | 無線回路やアンテナを内蔵した小型のカードやタグを使用し,読み取り装置を使って固有のIDを認証する.入室管理や交通機関の乗車カード,商品の盗難防止などに使われているほか,非接触で読み取れる性質を利用してバーコードの代替として流通分野における応用が期待されている.使用されている周波数はいくつかあり,周波数に応じて通信距離やタグの大きさなどの特性に違いがある.RFIDの規格については,ISO(国際標準化機構)による標準化が進んでいる |
もちろん,これ以外にもさまざまな規格が提案されていますし,今後もより高機能な無線通信規格が生み出されて普及していくことでしょう.