ARMベース・システムLSI開発の事例研究 ――CPUの選択,バス構成,グラフィックス処理やビデオ表示制御の取り扱い
● CPU内のメモリ容量は性能とコストから慎重に判断
ARM926EJ-Sは,ARMのV5TEJアーキテクチャに準拠したCPUで,論理合成可能なコアです.携帯電話向けのASICなどに多く採用されています.表2にその概要を示します.
ARM926コアは,MMUのほかに,命令キャッシュとデータ・キャッシュを内蔵しています.また,高速にアクセスできる密結合メモリ(TCM:Tightly Coupled Memory)が命令用(ITCM)とデータ用(DTCM)のそれぞれに用意されています.内蔵するこれらのメモリは,メモリ・コンパイラを使って簡単に構築できますが,そのサイズを決めるには,必要な処理性能と許されるコストを考慮した総合的な判断が必要です.本LSIの場合,仕様設計の段階でターゲットとするアプリケーション・ソフトウェアがほぼ完成していたので,必要なキャッシュやTCMの容量は早期に判断できましたが,チップ・サイズ(コスト)に大きく影響するので,システム性能とのトレードオフを考えながら慎重に判断する必要がありました.
表2 ARM926EJ-Sの概要
項 目 |
内 容 |
アーキテクチャ |
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ハーバード・バス |
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TCM |
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キャッシュ |
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MMU |
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ライト・バッファ |
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ETM9 |
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