ARMベース・システムLSI開発の事例研究 ――CPUの選択,バス構成,グラフィックス処理やビデオ表示制御の取り扱い
● ビデオ表示制御や描画処理高速化のブロックを搭載
本LSIの仕様を表1に,内部ブロック図を図1に示します.
テレビやLCDへの表示をコントロールするのがVDC(ビデオ表示プロセッサ)です.VDCは各種解像度の表示に対応し,かつスクロール機能や,テレビとLCDの同時表示などを実現します.テレビとLCDに異なる絵を同時に表示できるので,例えばメイン表示をテレビに出しながら,小型液晶パネルを操作コントローラとして使う,といったアプリケーションに対応できます.
グラフィックス描画はCPUで行うことが多いのですが,アニメーション的に同じオブジェクトを少しずつ動かしながら表示する場合に,毎回CPUが描画し直しているとシステム性能の面で厳しくなります.このため,CPUの描画処理をサポートするアクセラレータGDP(グラフィックス描画プロセッサ)を内蔵することにしました.GDPは回転や拡大・縮小などをハードウェアで実現し,描画性能を大幅に向上させます.
また,抵抗膜方式の液晶タッチパネルを直結できるコントローラを入れました.LCDパネルを持つ端末類は,ほとんどタッチパネルを持っているからです.この機能としては,タッチやリリースしたことを検知し,またタッチしている座標値を直接読み取ることが可能です.
これ以外に,サウンド入出力,USBインターフェース,UART,タイマ,DMAコントローラ,PS/2インターフェース(キーボード,マウス用),RTC(real time clock)などの周辺機能を内蔵しています.
表1 開発したグラフィックスLSI(AP4010)の仕様
本稿では,おもに陰の付いているところを説明する.
機 能 |
項目 |
内容 |
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図1 開発したグラフィックスLSIのブロック図
ARM926EJ-Sをコアにして,多くの周辺機能を搭載した.中央にマルチレイヤAHBがメイン・バスとして走っている.グラフィックス性能を確保するため,CPUもAHBも同一周波数(108MHz)で設計した.このバスに,バス・マスタが6個,スレーブが8個接続されている.低速なスレーブはAHB-APBバス・ブリッジ経由でAPBに接続されている.