ARMベース・システムLSI開発の事例研究 ――CPUの選択,バス構成,グラフィックス処理やビデオ表示制御の取り扱い
ここではARM926EJ-SをコアとするグラフィックスLSIの開発事例を紹介し,ARMベースのシステムLSIを開発する際のポイントを解説する.ファブレス半導体メーカである筆者らは,ビデオ表示やグラフィックス描画の機能,および各種入出力インターフェースを備えるLSIを開発した.フレーム・メモリをピンポン・バッファとして使える構成にしたり,グラフィックス描画のアクセラレータなどを組み込んだ. (編集部)
CPUコアを内蔵するシステムLSIやASIC(application specific integrated circuit)を開発するとき,CPUを選定するポイントとして,以下の項目があるかと思います.
- 性能と消費電力
- 手持ちのOSやソフトウェア資産の継承性
- OS,ミドルウェア,ライブラリ,アプリケーション・ソフトウェアの充実度
- ソフトウェア開発環境の充実度(コンパイラやICEなど)
- LSI内部のシステム設計の容易性
- CPUコアを取り巻くIP(intellectual property)コア群の充実度
- 各種技術情報の豊富さ
- LSIとしての最適コストの実現や最適技術の活用のため,複数のASICベンダやファブなどから提供されていること
CPUの選定は,性能や消費電力はもちろんのこと,アーキテクチャへの慣れやソフトウェアの継承性も重要であり,こうした条件はアプリケーションごとに異なるため,「これがベスト」というものはありません.ただし,初めてCPUを選定するときや,これまでの流れとは異なるアプリケーション向けのLSIを開発する場合には,上記の条件を比較的よく満たしているCPUの一つとしてARMを選択することが考えられます.
ファブレス半導体メーカである筆者ら(アプローズテクノロジーズ)は,ARM926EJ-Sをコアにしたグラフィックス制御LSI「AP4010」を開発しました.この開発事例を紹介しながら,ARM9コアの使用上のポイントや内部バスの構成,グラフィックス制御方式などについて説明します.