ARMベース・システムLSI開発の事例研究 ――CPUの選択,バス構成,グラフィックス処理やビデオ表示制御の取り扱い

山崎尊永

tag: 組み込み

技術解説 2006年7月27日

● LSIの仕様を決める前に応用ソフトを開発して評価

 本LSIの開発プロジェクトでは,LSIの仕様を決める前にアプリケーション・プログラムの開発を始めました.ARM922Tコアを内蔵した米国Altera社のFPGAを用い,この中に簡単なテレビ表示回路とサウンド用のPCM(pulse code modulation)出力回路を構築しました(写真1(a)).このシステム上にμITRON 4.0(TOPPERS)を移植し,アファイン変換やアルファ・ブレンディング機能を持たせたアニメーション・プレーヤを開発しました.MP3の再生ミドルウェアも移植しました.このシステムでは描画はすべてCPUで行っていたので性能が悪く,どこをハードウェア化すれば対策できるのかが一目瞭然でした.このシステムを解析しながら,GDPをはじめとするLSI仕様の詳細を決めていきました.

 本LSIは,Verilog HDLでRTL設計を行い,機能検証は基本的にはレガシなベクタ・シミュレーションによって実施しました.ただし,綿密な検証プランを立て(検証方針を明確化し,検証カバレッジの詳細項目を規定),論理の作り込み(方式設計,コーディング)には細心の注意を払いました.また,写真1(b)に示したFPGAボードを作成し,アプリケーション・プログラムの開発と並行にリアルタイム動作としてのシステム検証を実施しました.この結果,ファースト・シリコンで完全動作し,すぐに量産に持っていくことができました.

 バックエンド設計(レイアウト設計)においても,できるだけVth(MOSトランジスタのしきい値電圧)が低い高速セルは使わないようにして,消費電力の増加を防ぎました.

p01_01.jpg
(a)システム検討,ソフトウェア開発用


p01_02.jpg
(b)LSI検証用


写真1 検証用FPGAボード
(a)のFPGAボードを最初に開発した.この上で,システム・ソフトウェアの開発を行い,ハードウェア化すべき箇所を洗い出した.FPGAには,テレビのNTSCビデオ信号とサウンドを出力するだけのシンプルな論理のみを入れた.(b)のLSI検証用FPGAシステムは,ASICベンダから提供されている評価用チップ(内部のAHBが外部に引き出されている)にユーザ論理を入れるFPGAを接続した.A-Dコンバータ,D-Aコンバータ,一部のIPコアは,同じようにASICベンダから提供されているTEG(test element group)チップを使い,実チップと同等の機能を実現した.評価用チップから出ているAHBは低速でしか動かない.表示用のビデオ帯域を確保するため,ユーザ用外部バスから直接FPGAに接続する専用バイパス・ルートを設けて対策した.

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