自動車のセーフティ機能の多様化に対応するセンサ・ネットワーク ――エア・バッグ・システムのワイヤ・ハーネスの低減と信頼性の向上を目ざす
● Safe-by-Wire PlusコンソーシアムとISO標準化
各社独自のエア・バッグ・システム向けのLANプロトコルが提唱されるなか,エア・バッグ・システムに最適で,かつ標準的なプロトコルを作成しようという動きが出てきました.プロトコルが標準化されることにより,センサ・ユニットやスクイブを製造するメーカは,各自動車メーカが選択するLANプロトコルに対応したユニットを個別に開発する必要がなくなるため,大量生産によるコスト・メリットが出せると考えられます.また,自動車メーカも標準プロトコルを採用することでユニット納入メーカの選択肢が増えます.納入メーカ間で機能や価格面の競争が起こることにより,システムの機能向上やコスト低減が可能になるといった効果も期待できます.
エア・バッグ・システムの標準化活動は,センサやスクイブを含むエア・バッグ・ユニット・メーカ,および半導体メーカが中心となり,コンソーシアムを結成してプロトコルの作成を行ってきました.コンソーシアムは,ほぼ同じ時期に欧州,北米でそれぞれ立ち上がりました(図5).欧州では,ドイツのBosch社などが中心となって作成したBST(Bosch-Siemens-Temic)というプロトコルを提唱するBSTコンソーシアムが結成されました.一方,北米ではオランダのRoyal Philips Electronics社などが中心となってSafe-by-Wireコンソーシアムを立ち上げ,ASRB(Automotive Safety Restraints Bus)1.0というプロトコルを作成しました.Safe-by-Wireコンソーシアムは,上述の仕様策定の中心メンバであったプロモータ会員と,策定された仕様を先行して入手できたり,仕様に対する質問や意見を述べたりするアダプタ会員とで構成されます.
BSTとASRB1.0は仕様面で似通っているところが多かったこともあり,協調してより優れた標準化プロトコルを作成するべく,BST陣営がSafe-by-Wireコンソーシアムに参画し,Safe-by-Wire Plusコンソーシアムが2004年9月に設立されました(表1).
Safe-by-Wire Plusコンソーシアムでは,ASRB1.0仕様をベースにASRB2.0仕様を作成し,ISO22896として標準化活動が開始されました.2005年1月にはASRB2.0のISO標準化キックオフ・ミーティングが開催され,2005年7月現在,ASRB2.0仕様のISO承認手続きが行われています.
図5 Safe-by-Wire Plusコンソーシアム
各社独自のプロトコルを採用していたが,標準的でかつエア・バッグ・システムに最適なプロトコルを作成するべく,コンソーシアムが設立された.コンソーシアムは当初,欧州および北米でそれぞれ個別に設立されたが,より最適なプロトコルの標準化を進めることを目標として,Safe-by-Wire Plusコンソーシアムが2004年9月に設立され,ASRB2.0というプロトコルが作成された.現在,このASRB2.0プロトコルをベースとして,ISO22896の標準化が進められている.
表1 Safe-by-Wire Plusコンソーシアム・メンバ企業(2005年4月現在)
Safe-by-Wire Plusコンソーシアムは,プロモータ会員とアダプタ会員により構成される.メンバ企業は,エア・バッグ関連のECUメーカやインフレータ・メーカ,および半導体メーカなどである.
プロモータ会員
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アダプタ会員
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