「組込みスキル標準」を活用しよう ――目標や指標を持つことがスキルアップの近道に
1)スキル基準
「スキル基準」は,プロジェクトに必要なスキルを明確にし,必要な人材を手配(社内調整や社外調達)するために利用できます.開発プロジェクトに必要なスキルを明確にする際には,必要なスキル項目をスキル・カテゴリごとに抽出することから作業を始めます.
「技術要素」というスキル・カテゴリについては,開発対象製品の機能仕様や機能一覧,ハードウェア構成図などからスキル項目を抽出できるでしょう(例えば,携帯電話機の技術要素の例をすでに表3に示した).
「開発技術」,「管理技術」というスキル・カテゴリにおいてスキル項目を抽出するには,自社や自部門が持っている開発標準(標準的に使用する手順や手法,ツールなど)をスキル基準にマッピングすることから始めるとよいでしょう.開発標準を持っていないのであれば,これまでの開発を振り返って,使った手順や手法,ツールを洗い出し,スキル基準にマッピングします.そして,今回まとめた内容を次の開発などに利用できるようにしておけば,開発作業の効率や品質を向上できると考えられます.
プロジェクトに必要なスキルを明確にできれば,社内調整はもちろんのこと,社外調達についても具体的に要求を示したり,選択肢を取引(実績)のある会社以外に広げられる可能性があります.また,ものさしとなるスキル項目を発注する側と受注する側で共有できれば,要求にそぐわない人材調達を避けることができます.
また,組込みスキル標準に基づいたスキルの過不足情報は,プロジェクト・マネージメントにおけるリスク識別のための情報になります(「必要なスキルを持つ人材を手配できていない」ことはリスクである).スキルがまったく足りていない場合は開発条件を変更するか,外部から人材を調達する,時間に余裕があれば研修を計画するなどの対策を実施する必要があります.一方,スキル・レベルを充足している場合には基本的に問題はありませんが,投入要員のスキル・レベルが過剰である可能性はあります.要員コストが最適であるかどうかを確認してみる必要があるでしょう.