「組込みスキル標準」を活用しよう ――目標や指標を持つことがスキルアップの近道に
● 技術者個人の活用法
先ほど説明したように,組込みスキル標準を厳密に適用しようとすると,スキル項目や評価指標を設定する必要があります.しかし,個人的に自分のスキルを診断するだけであれば,そこまで厳密性や信頼性を確保する必要はないと考えられます(もちろん,所属している企業が組込みスキル標準を導入しているのであれば,その具体的な内容を活用するとよいだろう)注5.
キャリア基準と教育カリキュラムはまだドラフト版にすぎませんが,だいたいどのような方向で策定しているのかを知っていただき,正式版の公開にご期待いただければと思っています.
1)スキル基準
個々の技術者にとって,組込みスキル標準の「スキル基準」は,自分のスキルの現状を把握するのに役立ちます(いわゆる「スキルのたな卸し」).得意なスキルをさらに伸ばせば,キャリア・パスとして高い付加価値を生むスペシャリストを目指すことが可能です.また,現在の開発業務で求められるスキルや,目標のキャリアで求められるスキルを参考にして,不足するスキルを認識することも重要です(表4).不足するスキルについては,必要に応じて研修を受講したり,ジョブ・ローテーション(配置転換)を希望する,自己啓発に励むなどの対策が有効でしょう.プロジェクトにおけるリスク・マネージメントと同様に,不足するスキルをリストアップし,影響度や発生確率などを加味して対策を施してみてはいかがでしょうか.
なお,把握したスキルは現状のスナップ・ショットにすぎません.健康診断と同じように,半年または1年ごとにスキルを把握し,経年変化をチェックするとよいでしょう.
注5;SESSAMEでも,組込みスキル標準に基づいて,具体的なスキル項目と評価指標を提供することを検討中である.