Serial Attached SCSIとの共存を考慮したPCI Expressシステム設計 ――最大性能を引き出すためのバッファ,エラー制御,レイアウトの考えかた
エンド・ツー・エンド接続(終端間接続)のパス(経路)は,データの送信が始まる前に,イニシエータとターゲットの間に生成されなければなりません.そのため,フレーム送信の開始を遅らせる可能性もあります.しかし,ACK(アクノリッジ)をフレームに挿入することで性能を改善できます.帯域を上げるため,Serial Attached SCSIのワイド・ポートは,1リンクの場合と同じようにバースト・レートで複数のI/Oコマンドを並行して送信します.Serial Attached SCSIのワイド・リンクの仕様では,奇数または偶数の任意のリンク幅(例えば,二つ,三つ,四つ,あるいはそれ以上のリンク)を許可しています.Serial Attached SCSIの帯域はリニアに広がりますが,それはそれぞれのリンクをまとめて全二重通信を維持するためです.データはリンク間で分割されることはありません.各リンクは,ターゲット・デバイスに独立して接続される形をとっています.それぞれのリンクにおけるエラーは性能を引き下げますが,ワイド・リンク全体の障害の原因にはなりません.
Serial Attached SCSIと同じように,PCI Expressは一度に双方向のデータ送信を行うことで,1レーン当たり最大5Gbpsのデータ伝送速度を実現しています.レーンを複数束ねればより広い帯域に対応できます.ACKフレームはフレーム間に挿入されますが,これによって次のフレームに遅延が生じます.しかし,一つのACKフレームは複数の受信フレームに対応します.Serial Attached SCSIとは異なり,PCI ExpressのI/Oコマンド・データの送信はシリアルで行われており,リンクがつねに接続されているため,スタート時の遅延はありません.