Serial Attached SCSIとの共存を考慮したPCI Expressシステム設計 ――最大性能を引き出すためのバッファ,エラー制御,レイアウトの考えかた
● PCI ExpressシステムとSASシステムの違いを知る
新しいシリアル・アーキテクチャであるPCI Expressは,現在および将来のシステムのインターコネクトに対する幅広い要求を実現するために規格化されています.例えば,今後の10GビットEthernetやSerial Attached SCSIに対応できるように,柔軟性や拡張性,高い帯域性能などを備えています.ホットプラグやホットスワップに対応したポイント・ツー・ポイントのアーキテクチャをとるPCI Expressですが,ソフトウェアについては従来のPCIやPCI-Xと互換性があります.
一つのPCI Expressリンク(1レーン)は,二つ(送信側と受信側)の低電圧差動信号ペアで構成されます.また,Serial Attached SCSIと同じように,PCI Expressも8b/10b符号化方式を用いたエンベデッド・クロックを採用しています.これによって,信号品質(シグナル・インテグリティ)を維持しつつ,高速なデータ転送速度を実現します.
1レーン当たりのデータ転送速度は単方向で2.5Gbpsです(実効レートは2Gbps).x1やx2,x4,x8,x12,x16,x32注4のリンクを構成することで,最大128Gbpsのノード間のポイント・ツー・ポイント接続を可能とします.
ワイド・リンク注5によるデータ伝送において,PCI ExpressがSerial Attached SCSIと大きく異なる点は, バースト・レート(最大データ転送速度)による広帯域を提供するために,PCI Expressのデータはレーンを束ねたリンクごとに水平方向に分割されることです.このため,かりにあるレーンになんらかのエラーが発生すると,すべてのレーンが機能しなくなります.Serial Attached SCSIの場合,データはリンクごとあるいは一つのワイド・ポート ごとに垂直に分割されます.そのため,一つのSerial Attached SCSIのリンクに不ぐあいが生じても,ワイド・ポートの残りのリンクがデータ転送を続けます.
Serial Attached SCSIは,全二重通信のポイント・ ツー・ポイント接続というアーキテクチャによって,同時に複数のイニシエータとターゲット・デバイスの間の接続をアクティブ(有効)にすることができます.デバイスは一度に双方向のデータを送信できます.また,先に述べたように,これらの複数のリンクを結合してワイド・ポートを構成できます.そのため,システム設計者は,利用可能な帯域を増やすために,Serial Attached SCSIイニシエータやエクスパンダの性能を一つにまとめることができます.つまり,四つまたは八つのリンクを束ねることで,24Gbpsまたは48Gbpsの帯域を実現できます.
注4;レーンを一つまたは複数束ねたものをリンクと呼ぶ.x1(バイ・ワン)リンクは一つのレーンで,x2リンクは2レーンで,x32は32レーンで構成される.
注5;本稿でワイド・リンクという場合,Serial Attached SCSIについてはワイド・ポートを,PCI Expressについてはx2以上のリンク(複数レーンの構成)を指す.