Serial Attached SCSIとの共存を考慮したPCI Expressシステム設計 ――最大性能を引き出すためのバッファ,エラー制御,レイアウトの考えかた
しかし,クロック・スキューやクロストーク・ノイズの増大といった重要な技術的課題を考えると,今後,次のような要求を強く求められるようになるでしょう.
- データ・インテグリティの(データ品質)ロバスト(堅ろう)性
- システム性能の高速化
- ストレージの拡張性・柔軟性の向上
- システムの小型化設計
しかし,こうした要求に対応するのに,今日のパラレル技術を改変しながら利用し続けることは,コスト面から考えて現実的であるとは言えません.
こうした背景から,Serial Attached SCSI(SAS)やPCI Expressといったシリアル・アーキテクチャが現れました.これらのシリアル・アーキテクチャはデータ信号にクロックのタイミングを埋め込んだ(セルフ・クロッキング方式)信号ペアを用いることで,パラレル・アーキテクチャと比べてデバイスのパスウェイごとに,より広い帯域幅を提供します.さらに,クロック速度を容易に引き上げることができます.また,データの複数ビットを一つのパケットにまとめて装置間の転送を行います.パケットは,パラレル方式の場合と比べて最大30倍も高速に伝送されます.
また,パラレル・バスのマルチドロップ(共有バス型)アーキテクチャに対して,シリアル・バスは専用線を用いて装置間を接続するポイント・ツー・ポイント(1対1)のネットワークを構築できます.ポイント・ツー・ポイントのバス・アーキテクチャは,以下のような利点をもたらします.
- 装置ごとに最大帯域幅を利用する
- アービトレーション(調停)を行う必要がない
- 伝送遅延が低減する
- ホットプラグやホットスワップに対応したシステムの構築が容易になる