携帯電話に搭載される「D級アンプ」 ――LCフィルタが不要で高効率
●PWMは250kHz,シャットダウン時間は9ms
このICのPWMのスイッチング周波数は250kHzですが,どうしてこの周波数になったのでしょうか.音声の可聴帯域は20kHzまでなので,最低でもその10倍以上のサンプリング周波数が必要となります.また,一般的な話としてサンプリング周波数を上げると音の忠実度が上がりますが,単位時間当たりに出力段でスイッチする回数が多くなるので,スイッチング・ロスが大きくなり,その分消費電流が大きくなります.音質と消費電流はトレードオフの関係にありますが,携帯機器ではより消費電流を抑えることが求められることから,250kHzという数値を導き出しました.
また,本ICのシャットダウン復帰時間は9msとしました.携帯電話では音を出さないとき,ICをシャットダウン・モードにして消費電流をできる限り小さく抑えることが重要です.その際,シャットダウンからの復帰時間が長いと頻繁にシャットダウンすることができなくなってしまいます.また,電源投入のときにボツ音(ノイズ)を減らすため,シャットダウンさせておいてから電源投入後にシャットダウン解除を行うことを推奨しますが,前段のCODEC LSIの立ち上がりが9msよりも遅い場合には,さらに解除するタイミングを遅くしなければなりません.このシャットダウン時間は,製品によってはBYPASSピンの外付けコンデンサの容量を変えることによって変更できますが,本ICでは外付け部品点数を減らすため,コンデンサを外付けするようにはなっていません.