携帯電話に搭載される「D級アンプ」 ――LCフィルタが不要で高効率
●圧電スピーカとD級アンプを組み合わせる
近年,スピーカの薄型化の要求からピエゾ型圧電スピーカが注目を集めています.圧電スピーカは単純な容量性の負荷と考えることができます.D級アンプとセットで使用する場合,PWM出力にチップ・コイルを接続し,圧電スピーカとインダクタンスのLCフィルタを構成して動作させることが可能です.例えば,0.01μF程度の圧電スピーカでは,4.7μH程度のチップ・コイルを出力に対して直列に接続することによってLCフィルタが構成され,アナログの電圧波形が印加されて圧電スピーカが動作します.最近では,低電圧で動作する圧電スピーカが登場してきていますが,十分な音圧をとるにはピーク間で9V以上の振幅が必要とされています.
携帯電話への搭載を考えた場合,リチウム・イオン電池に直結してアンプの出力をBTL接続しても,振幅は9Vに達しないことになります.ですから,レギュレータで5V以上の電圧を作ってからアンプを動作させる必要がありますが,このように昇圧してから動作させると効率が落ち,D級アンプの高効率の良さが生きないという問題があります.今後,さらに低電圧で十分な音圧をとれる圧電スピーカが出てくれば,薄型化と高効率化の両立を図ることが可能となり,D級アンプと圧電スピーカの組み合わせは,携帯電話にとって非常に有効な解となることでしょう.
たきがわ・ひろゆき
日本テキサス・インスツルメンツ(株)
◆筆者プロフィール◆
滝川宏之.1994年,日本テキサス・インスツルメンツに入社.現在,汎用OPアンプからオーディオ・アンプまで,幅広く製品を担当する.